先日、当店のカウンターに少し気まずそうな表情で iPhone X を差し出されたお客様がいらっしゃいました。画面はバキバキ、しかもなぜか本体の上半分に黒いテープのような跡。「実は…磁石を貼ってみたんです」と切り出された瞬間、当店スタッフは静かにメモを取り始めたのでした。
2019 年から大阪・松屋町でスマートフォン・タブレット修理を専門に対応してきましたが、磁石で Face ID をだまそうとした事例は月に 1 件あるかどうか。今回は iPhone X 特有の構造と、ネット情報を鵜呑みにした DIY がどこで破綻したかを、現場で起きた事実ベースで共有します。
失敗の経緯 — 「磁石で Face ID 突破」の都市伝説
お客様の話を整理すると、こうです。落下で画面の右下から斜めにヒビが入り、タッチは効くものの Face ID が反応しなくなった。修理に出す前に「磁石を画面に乗せると近接センサーが反応してロックが解除できる」という海外の動画を見つけ、ネオジム磁石を液晶側に貼り付けたまま 1 時間ほど放置したとのこと。
警告: iPhone の Face ID は 30,000 個以上の赤外線ドットを顔に投射して 3D マップを作る仕組みであり、磁石で代替できる類のセンサーではありません。むしろ強磁場に長時間さらすと、近接センサーや TrueDepth カメラ周辺のフレキ配線に影響が出るケースが報告されています。
結果として、ロックが解除できないどころか、画面オン/オフ時に効くはずの近接センサーまで誤反応を始め、通話中に画面が暗転しない、自動輝度がおかしくなる、といった二次症状が発生。さらに「磁石を外そうとしてヘラで画面を持ち上げたら液晶ケーブルを切ってしまった」という追い討ちまで重なっていました。
持ち込まれた時点の被害状況
カウンターでお預かりし、当店の作業台で診断を始めました。状態は次の通り。
- 画面右下から放射状にクラック、表面ガラスが部分的に剥離
- 液晶への信号が途切れ、画面下半分が緑色に変色
- Face ID は「Face ID は使用できません」表示で完全に無効化
- 近接センサーが常時 ON 判定、通話画面が真っ暗のまま
- 磁石を当てていた付近のフレキケーブルにわずかな歪み
iPhone X は 2017 年発売で当店でもまだ月に 3-4 件持ち込まれる現役機種ですが、TrueDepth カメラと画面が一体化した構造のため、画面交換時にも上部センサー部のフレキを慎重に移植する必要があります。今回はその移植元のフレキ自体に物理的ストレスがかかった疑いがあり、一筋縄ではいきません。
当店では同じような 同じ症状の他事例 を症状ノートに残しており、過去の判断を比較しながら方針を立てます。今回は ① 画面アセンブリ交換 ② Face ID 関連フレキの可動チェック ③ 動作確認、の三段構えとなりました。
修理での回復 — 純正同等画面 + フレキ点検
分解前にお見積もりを提示し、ご了承をいただいた上で作業を開始。お預かり時間の目安は当日内ですが、Face ID 関連のフレキ確認が入る場合は翌営業日返却となるケースもあります、と事前にお伝えしました。
具体的な手順は次のとおり。
- 本体下部のペンタローブネジを外し、吸盤と薄刃ヘラで画面を慎重にリフトアップ
- 磁石によって若干歪んだ画面側フレキの状態を顕微鏡で確認
- TrueDepth カメラ・近接センサー・スピーカーモジュールを既存画面から分離
- 純正同等品質の新品画面アセンブリへセンサー類を移植 (位置決めが iPhone X は特にシビア)
- Face ID キャリブレーション、近接センサー動作、True Tone、3D Touch を順番にテスト
幸い、Face ID 関連フレキ自体は熱を加えて少し成形すれば再利用できる範囲のダメージで済んでいました。もし磁石放置の時間がもう少し長ければ、TrueDepth カメラのドットプロジェクタ側に影響が出て画面交換だけでは復旧しなかった可能性もあります。今回は 3 時間ほどの実作業で、Face ID も近接センサーも正常動作する状態に戻りました。

iPad の事例ではありますが、画面アセンブリと内部基板を切り分けて診断する流れは iPad画面割れ修理の流れ でもご紹介しています。発想は共通です。
今後への教訓 — DIY 前に立ち止まってほしいこと
お客様には作業内容を画像で共有し、「磁石で Face ID は解除できない」「ご自身で画面を開ける際に液晶ケーブルへ無理な力が加わると、画面以外の故障に飛び火する」という事実を、責めるニュアンスを抜きでお伝えしました。最後には少しホッとした表情で、「最初から持ってくればよかった」とお帰りに。
当店として線引きしたいのは、ネット上の情報やインターネットで購入した部品での DIY を否定するつもりはない、ということです。ただ iPhone X のように画面とセンサーが構造的に絡み合った機種では、画面破損だけだったはずの故障が、開けたことで二次故障を呼ぶ事例が経験上少なくありません。
具体的には次の 3 点が、当店としての教訓となります。
- 磁石・強磁場系のロック解除テクニックを真に受けない (TrueDepth カメラを痛める恐れ)
- 画面割れ単体なら早めに相談していただいたほうが、結果的に復旧範囲が狭く済むケースが多い
- 分解後でも諦めずに持ち込んでほしい — 当店ではフレキ移植や基板側の点検まで対応可能
修理後は技術基準適合確認のうえお引渡しいたします。交換した部品に対して 3 ヶ月の動作保証 (落下・水濡れなど使用上のトラブルは対象外、詳細は保証規約ページ) を付けていますので、再発が不安な方も少し肩の力を抜いてご相談ください。料金は機種・症状によって異なります。お見積もりは無料、提示後のキャンセルも可能 (分解診断・部品発注後は所定の手数料が発生する場合があります) となります。
過去の修理記録は 修理ブログ一覧 にもまとめています。同じ機種の似たトラブルがあるかもしれません。お住まいの地域から離れている方も、配送修理に対応していますので、まずは 大阪・松屋町スマエキ までお問い合わせフォームでご相談を。修理料金の目安 もあわせてご確認いただければと思います。営業時間は 10:00〜19:00、水曜定休。松屋町住吉 6-26 でお待ちしております。
よくある質問
iPhone X の画面割れ修理は当日返却できますか?
画面割れ単体であれば当日内のお預かりで返却できるケースが多くなっています。ただし今回のように Face ID 関連フレキの点検や移植が必要な場合は、翌営業日にまたぐこともあります。受付時にお預かり時間の目安をお伝えします。
磁石で Face ID は解除できますか?
解除できません。Face ID は赤外線ドットを顔に投射して 3D マップを作る方式で、磁石で代替できる仕組みではありません。むしろ強磁場に画面付近を長時間さらすと、近接センサーや TrueDepth カメラ周辺のフレキ動作に悪影響が出るケースが報告されています。
自分で分解して失敗した端末でも修理を受け付けてもらえますか?
はい、当店ではご自身で開けた後の端末も診断からお受けしています。分解前より作業範囲が広がる場合は、見積もり提示時にその旨をお伝えします。提示後のキャンセルも可能です (分解診断・部品発注後は所定の手数料が発生する場合があります)。
iPhone X の画面交換で Face ID が使えなくなる心配はありますか?
画面アセンブリ側にある TrueDepth カメラと近接センサーを慎重に移植することで、多くのケースで Face ID も従来通り動作します。ただし元の状態でセンサー側に物理的ダメージがある場合は、画面交換だけでは復旧しないこともあるため、事前に診断をお伝えします。
店舗の場所と営業時間を教えてください。
大阪市中央区松屋町住吉 6-26、最寄りは大阪メトロ長堀鶴見緑地線・松屋町駅です。営業時間は 10:00〜19:00、水曜定休となります。郵送での配送修理依頼にも対応していますので、遠方の方はお問い合わせフォームよりご相談ください。
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