2019 年から大阪・松屋町でスマートフォン修理を続けていますが、年に数件、ヒヤリとする持ち込みがあります。先日対応した iPhone 7 もそのひとつでした。背面が浮き上がるほど膨らんだバッテリーを、お客様自身がガムテープでぐるぐる巻きにして圧縮した状態で届いたのです。お話を伺うと「破裂しないように押さえつけたかった」とのこと。意図は理解できますが、実は逆効果で、セルへの負荷を高めてしまう行為でした。今回はその経緯と、当店での回復までの流れを記録として残しておきます。

持ち込みに至るまでの経緯 — 圧縮で押さえ込もうとした DIY

このお客様は、iPhone 7 を 2017 年の発売直後から愛用されていた方でした。半年ほど前から「画面が浮いてきた気がする」と感じていたそうですが、まだ動くからと使い続け、ある日とうとう背面ガラスが本体から完全に分離してしまったとのこと。慌ててインターネットで対処法を検索したところ、海外サイトで「強く圧迫すれば一時的に膨張が収まる」という情報を見つけ、それを参考にガムテープを 3 周ほど巻き付けて圧縮なさったのでした。

持ち込まれた時点では、テープの上からでも明らかに中央部が盛り上がっており、本体を軽く触るとぶよぶよと沈む感触がありました。お客様としては「なんとか元に戻ってくれ」と願う気持ちだったのでしょうが、リチウムイオンセル内部のガス膨張は外圧で押さえ込めるものではなく、むしろセパレーターを変形させて内部短絡のリスクを高める結果になっていました。

注意: 膨らんだリチウムイオンバッテリーをテープ・クランプ・万力などで圧縮するのは非常に危険です。内部のセパレーターが破れると、正極と負極が直接触れて発熱・発火に繋がるおそれがあります。膨張に気付いた時点で使用を止め、専門店へお持ち込みください。

分解前に確認した被害状況 — セル破裂寸前のサイン

当店で受け付けた直後、まず店頭の防火トレーに端末を移し、表面温度をサーモで確認しました。室温 22 度に対して本体中央が 38 度前後。明らかに自己発熱が始まっており、待合スペースから離した作業台で慎重に開封作業へ移ります。ガムテープを少しずつ剥がしていくと、想像以上に膨張したセルが姿を現しました。バッテリー単体の厚みは新品の倍近く、コーナー部の外装フィルムには小さな裂け目まで入っていたのです。

さらにディスプレイケーブルを点検すると、フレキ上にうっすらと電解液のにじみらしき跡。お客様には「本来であればこの状態で電源を入れること自体が危険でした」と事実をお伝えしました。同じ症状の他事例でも、膨張に気付かず使い続けた結果、画面側のガラスが押し上げられて割れるケースは月に 3-4 件ほど経験しています。今回はそれに加えて、外圧によるセル変形が重なった珍しいパターンでした。

持ち込み時のチェックでわかったのは次の三点でした。第一に、バッテリーセルが片側に寄って変形していたこと。第二に、ロジックボード周辺に熱痕は無かったこと。第三に、Lightning コネクタ周辺の防水パッキンが完全に剥がれ、内部に湿気が入り込みやすい状態だったことです。電源は切れていたものの、これ以上時間を置けばセルが破裂する可能性が高い状態でした。

回復までの流れ — 安全な分解・廃棄・交換

作業はバッテリーの完全放電から始めました。電圧を測ると 3.2V 付近まで落ちており、強制放電器に接続して 30 分ほどかけてさらに電圧を下げます。膨張セルをいきなり取り外すとショートして発火する可能性があるため、この前処理が肝心でした。続いて、画面アセンブリと本体フレームを切り離し、バッテリー押さえブラケットをひとつずつ外していきます。

iPhone 7 のバッテリーは粘着ストリップで底面に貼り付けられている構造ですが、今回はストリップが熱で硬化しており、引き抜きでは取れない状態でした。やむを得ずプラスチック製のスパチュラで側面から少しずつ持ち上げ、セル外装に傷を付けないよう 20 分ほどかけて慎重に分離。取り外したセルは耐火容器に入れ、当店契約の産業廃棄物業者へ後日引き渡す手順としました。

iPhone 7 battery 修理事例

新しいバッテリーは純正同等品の正規ルート品を使用します。容量・電圧・コネクタ形状を新品同様に揃え、装着後はサイクルカウントとデザインキャパシティを iPhone 診断ツールで確認。今回は 100% を維持できる新品状態であることを確認できました。Lightning 周辺の防水パッキンも合わせて貼り直し、最後にディスプレイの起動テストとタッチ反応を 5 分ほどチェックして作業完了となります。当店ではバッテリー交換のお預かり時間は 30 分目安(在庫・混雑により前後)で、機種・症状によっては当日返却可能なケースもあります。

修理後は技術基準適合確認のうえお引渡しいたしました。iPad画面割れ修理の流れとほぼ同じ要領ですが、バッテリー膨張は分解前の安全確認が特に重要だと改めて感じた一件でした。お見積もりは分解前無料、分解診断・部品発注後は所定の手数料が発生する場合がございますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

今後への教訓 — 膨張サインへの早期対応とプロ任せの判断

今回の事例から学べるのは、膨張バッテリーは「見た目で判断できる症状」だということです。背面ガラスが浮く、ホームボタンが押し込みにくくなる、フレームと画面の間に隙間が見える — これらはすべてセル膨張のサインで、放置すれば必ず悪化していきます。「動くから大丈夫」と思って使い続けると、ある日突然破裂や発火に繋がるおそれがありました。

もうひとつの教訓は、外圧で症状を抑え込もうとしないことでした。セル内部のガスは化学反応の結果として発生しているため、テープや重しで押さえても根本的には解消されません。むしろセパレーターを変形させ、内部短絡を誘発する結果となります。経験上、膨張に気付いてから 1 週間以内にバッテリー交換をご依頼いただければ、本体側の損傷もほぼ無く済むケースが多いです。

当店は 大阪・松屋町スマエキ として、来店修理だけでなく郵送での配送修理にも対応しています。「持ち込めない距離だ」という方は、お住まいの地域から発送いただき、修理後に返送する流れとなります。料金は機種・症状によって異なりますので、修理料金の目安をご確認のうえ、お問い合わせフォームよりご連絡いただければと思います。営業時間は 10:00〜19:00、水曜定休です。過去の対応事例については 修理ブログ一覧 もご参考にどうぞ。

iPhone 7 はすでに発売から年数が経過した機種ですが、まだまだ現役で使われている方も多くいらっしゃいます。膨張は経年劣化と充放電サイクルの結果として誰の端末にも起こり得るものでした。サインを見逃さず、自己流の圧縮や穴あけ、冷凍庫での冷却といった噂レベルの対処は避け、専門店へお持ち込みいただくのが結果的に近道となります。今回のお客様も「最初から相談しておけば良かった」とおっしゃっていました。同じ後悔をされる方が一人でも減れば幸いです。

よくある質問

膨張したバッテリーをテープで巻いて押さえつけても大丈夫でしょうか?

外圧で押さえ込むのは推奨できません。セル内部のセパレーターが変形して内部短絡を起こすリスクがあり、当店でも今回のような危険な状態で持ち込まれた事例が年に数件あります。膨張に気付いた時点で使用を止め、専門店へご相談ください。

iPhone 7 のバッテリー交換はどのくらい時間がかかりますか?

お預かり時間はバッテリー交換で約 30 分目安(在庫・混雑により前後)です。機種・症状によっては当日返却可能なケースもあります。膨張が進んでいる場合は安全確認のため、もう少しお時間をいただく場合もございました。

膨張バッテリーは廃棄してもらえますか?

当店契約の産業廃棄物業者へ引き渡す手順を取っております。お客様自身で家庭ごみに出すと発火事故の原因となるため、修理時にそのまま回収する形でご対応しています。

遠方なのですが配送での修理依頼はできますか?

郵送依頼を承っております。元払いでお送りいただき、修理完了後に返送する流れとなります。膨張バッテリーの場合は梱包方法に注意点がありますので、事前にお問い合わせフォームよりご相談ください。

修理後の保証はありますか?

交換した部品に対して 3 ヶ月の動作保証をお付けしております。落下・水濡れなど使用上のトラブルは対象外で、詳細は保証規約ページをご確認ください。