先日、画面が大きく割れたiPhone 8をお持ちになったお客様から、少し珍しいご相談を受けました。ネットで「樹脂を溶かして塗れば割れたガラスを補修できる」という記事を見つけ、3Dプリンター用のフィラメントを画面の上から熱で溶かして塗布する方法を試されたとのこと。結果として、当初の画面割れだけでは済まない状態になっていました。当店は2019年から大阪・松屋町でスマートフォンとタブレットの修理を専門に対応しており、月に2-3件はDIYで状態を悪化させた端末のご依頼を頂きます。今回はその一例を、教訓として記録に残しておきます。

iPhone 8 screen-crack 修理事例

失敗の経緯 — 樹脂を溶かして塗ろうとした結果

お客様のお話によると、画面割れの修理代を抑えるためご自身で対処しようと考え、ネット記事を参考に「PLAフィラメントを高温で溶かしてガラスのヒビに流し込む」という方法を試されたそうです。ハンダごての先で温めながらフィラメントを画面に押し当てた、とのことでした。当初は「ヒビが埋まればタッチも復活するだろう」というご想像だったようです。

しかし実際には、フィラメントが溶ける温度はおおよそ180〜220℃前後。これはiPhone 8の前面ガラスや有機系の偏光フィルム、そしてアルミニウム合金フレームが安全に耐えられる温度を大きく超えています。短時間でも局所的にこの熱が加わると、内部の構造に深刻な影響が出ることになります。

類似の経緯でお持ち込みされる事例については、同じ症状の他事例でもいくつか紹介しておりますので、ご参考までに。

被害状況 — ガラス溶解とフレーム変形の同時進行

ご注意: スマートフォンの画面・フレームは耐熱設計されていません。半田ごて・ヒートガン・ライターなどの高温器具を画面側から当てる行為は、ガラス・偏光板・粘着層・バッテリー・基板すべてにダメージを与える可能性があります。

お預かりした端末を診断台で確認したところ、被害は以下のように複合化していました。

  • 前面ガラスの一部が局所的に溶けて変形し、フィラメントの樹脂と一体化
  • 偏光フィルムが熱で焦げ、表示が暗く滲んだ状態に
  • アルミフレーム上部が熱でわずかに反り、ガラスとフレームの間に隙間が発生
  • フロントカメラ周辺の防水シールが融解し再利用不可
  • バッテリー上端が熱の影響で膨張気味、安全のため要交換と判断

本来であれば画面交換のみで済んだはずの案件が、フレーム交換 + バッテリー交換 + 各種シール再施工まで波及することになりました。お客様も診断結果をご覧になって、「ここまで広がるとは思っていませんでした」と、かなりショックを受けたご様子でした。

修理での回復 — 全交換 + フレーム移植で復旧

iPhone 8 の場合、画面とフレームは一体構造のため、フレームが歪んでしまうと基板を新しいフレーム側へ移植する形での対応となります。当店では同型番の中古良品フレームを在庫しており、今回はそちらを使用する方針でお見積もりを提示。お客様に内容をご確認頂いたうえで作業に入りました。

作業の流れは大まかに次の通りでした。

  1. 溶融樹脂と前面ガラスの破片を慎重に剥離(熱を加えず物理的に除去)
  2. 基板・Lightningコネクタ・スピーカー・Touch ID等のパーツを順次取り外し
  3. 状態の良いフレームに各パーツを移植、防水シールを新品に貼り直し
  4. 新品の互換ディスプレイとバッテリーを装着、組み上げ
  5. 表示・タッチ・Touch ID・通話・カメラ・Wi-Fi・充電動作を一通り確認

お預かり時間は混雑状況にもよりますが、今回は朝お持ち込みで夕方ご返却。動作確認の段階で、データもそのままお渡しできることをお客様にご覧頂きました。基板のダメージが軽度だったことが幸いだったケースです。修理後は技術基準適合確認のうえお引渡しいたしました。同様の重度案件の流れについてはiPad画面割れ修理の流れのページもご参照頂ければと思います。

今後への教訓 — DIYを検討される前に確認したい点

今回の件で改めて感じたのは、ネット上の情報には「成功例」だけが目立ちやすく、失敗時にどこまで被害が広がるかが見えにくい、という点でした。お客様自身、複数の動画や記事を参考にされたそうですが、温度管理や端末の耐熱性能に関する記述は見当たらなかった、とのことです。

ポイント: ガラスのヒビは「見た目だけの軽い損傷」と思われがちですが、内部にはタッチセンサー・偏光板・粘着層・防水シール・バッテリーが密接に配置されています。表面処理を試みると、目に見えない層へ熱や圧力が伝わり、結果的に修理範囲が広がるケースを当店では何度も経験しています。

もちろん、ご自身での修理を否定するつもりはありません。ただ、画面割れに限って言えば、分解前のお見積もりは無料で、お見積もり提示後のキャンセルも可能です(分解診断・部品発注後は所定の手数料が発生する場合があります)。一度状態を見せて頂ければ、現実的にどの選択肢が妥当なのか、お客様と一緒に判断できます。

当店は大阪・松屋町スマエキにて10:00〜19:00で営業(水曜定休)、ご来店だけでなく配送修理にも対応しております。料金は機種・症状によって異なりますので、修理料金の目安のページをご覧頂きつつ、お問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。過去の事例は修理ブログ一覧にも順次まとめております。交換した部品に対しては3ヶ月の動作保証(落下・水濡れなど使用上のトラブルは対象外、詳細は保証規約ページ)もお付けしております。

よくある質問

DIYで状態が悪化した端末でも修理は受け付けてもらえますか?

多くのケースで受付可能です。基板まで損傷が及んでいない場合はフレーム交換 + 画面交換で復旧できる事例も少なくありません。まずは現物を拝見してからお見積もりをご提示します。

iPhone 8 のフレームが歪んでいると言われた場合、データは消えますか?

基板自体が無事であれば、フレームを交換してもデータはそのまま保持できる場合がほとんどです。ただし重度の熱・水・衝撃が基板に達している場合は事前バックアップを推奨しております。

見積もりだけお願いすることはできますか?

分解前のお見積もりは無料で、お見積もり提示後のキャンセルも可能です(分解診断・部品発注後は所定の手数料が発生する場合があります)。お気軽にご来店またはお問い合わせフォームをご利用ください。

配送修理でもフレーム交換のような重度案件に対応できますか?

対応可能です。お預かりからご返送までの目安は機種・症状によって異なります。詳細はお問い合わせフォームよりご連絡頂ければ、配送方法と流れをご案内いたします。