2019 年から大阪・松屋町で修理を続けていると、月に 2-3 件は「自分で直そうとしてダメになった」端末が持ち込まれます。今回お預かりしたのは、ご家族用の予備機として使われていた iPhone 11 Pro。お客様ご本人がインターネットで方法を調べ、家にあったバスタブ用のシーリング材で画面のヒビを埋めようとしたケースでした。落下からほぼ一週間、毎日少しずつ症状が悪化していった末のご来店でした。

iPhone 11 Pro screen-crack 修理事例

1. 「ガラスのヒビなら埋めれば直るのでは」という発想の落とし穴

お客様の話では、画面の右上から左下に向かって 5 本ほどヒビが走っていたそうです。タッチは反応する、表示も問題ない。ただヒビから細かいガラス片が指に当たるのが嫌で、最初は透明のセロハンテープで応急処置をされていたとのこと。それでも数日経つとテープが浮いてきて、隙間からホコリが入ってしまう。そこで「お風呂場のヒビ埋めに使ったシーリング材が余っていたから、これを薄く塗れば固まって表面が滑らかになる」と思いついたそうです。

当店からひとこと: シリコン系シーリング材は硬化前は液状で隙間に流れ込み、硬化後はゴム状で簡単には剥がれません。電子機器の表面に乗せると、想像以上に内部へ浸透していきます。

塗布されたのは綿棒で薄く一塗り、と本人は仰っていました。ところが、ヒビは表面だけでなく液晶側まで貫通していたため、シーリング材は毛細管現象で内部に吸い込まれていきます。さらに iPhone 11 Pro の画面と本体フレームの間には防水パッキン用のごく細い隙間があり、そこにも材料が回り込んでいきました。お客様は「表面がきれいになった」と一旦は満足されたそうですが、24 時間後に異変が起きます。

2. 持ち込み時の被害状況 — 想定の倍の重症

当店にお越しいただいたのは、ご来店時で塗布から約 5 日後。状態を確認すると以下のような状況でした。

  • 画面下部のホームバー周辺に薄黄色のシミ(硬化したシーリング材が液晶層まで浸透)
  • タッチパネル下半分が反応せず、文字入力ができない
  • 画面と本体の境目にゴム状の樹脂がはみ出して固着、爪で押しても動かない
  • 側面音量ボタンの隙間にも樹脂が回り込み、ボタン操作に違和感あり
  • フロントカメラ周辺の近接センサー部分が曇ったように白濁

「ヒビを埋めただけ」のつもりが、結果的にはタッチ機能・防水パッキン・センサー部・側面ボタンと、5 箇所に影響が広がっていたわけです。お預かりして開封作業に入る前から、通常の画面交換とは別工程が必要なのが見えていました。同じ症状の他事例でも、応急処置の素材選び一つで作業時間が大きく変わるケースを何度か経験しています。

3. 復旧作業 — 通常の画面交換に「樹脂除去」の手間が加わる

分解は通常 30 分目安の作業ですが、今回はそうはいきませんでした。まずヒートガンで本体側面をゆっくり温め、固着した樹脂を柔らかくしながらピックを差し込んでいきます。普段ならスッと入る隙間が、今回は無理に力を入れると本体フレームを傷めるため、慎重さが必要でした。

画面が外れた後も、フレーム内側にこびり付いた樹脂をプラスチック製のヘラとイソプロピルアルコールで根気よく除去。バッテリー上部にまで樹脂が達していたため、バッテリー交換も併せて行う方針となりました(浸透した樹脂が長期的にバッテリーセルへ影響するリスクを避けるため)。フロントカメラのフレキケーブル付近も同様に清掃しています。

お預かりは合計で 2 日。最終的には新しい画面アセンブリへの交換、防水パッキンの貼り直し、内部清掃、動作確認まで完了し、お客様の元へお戻ししました。お引渡し前には技術基準適合確認のうえ、タッチ精度・近接センサー・スピーカー・各ボタンの動作を一つずつチェック。修理ブログを残しておいたので、修理ブログ一覧から他の事例もご覧いただけます。なお iPad の画面割れも構造は似ているため、興味のある方はiPad画面割れ修理の流れもどうぞ。

4. 今後同じ失敗を避けるために — 当店からの教訓

今回の件で改めて感じたのは、「表面のヒビ」と「内部への影響」は別物だということです。ガラスにヒビが入った時点で、防水パッキンの密閉性も弱まっており、外から塗ったものは想像以上に内部へ届きます。シーリング材だけでなく、瞬間接着剤・マニキュア・透明ボンドなど、硬化する液体は基本的に同じ結果になりやすいと経験上感じております。

応急処置のヒント: ヒビが指に当たって危ない場合は、画面保護フィルムを上から一枚貼るだけでも飛散防止になります。修理に出すまでの数日であれば、これで十分凌げるケースが多いです。

もう一つ大切なのは、「DIY で症状が増えると修理工数も増える」という点。お見積もりは分解前であれば無料、分解診断・部品発注後は所定の手数料が発生する場合がありますが、最初の段階でご相談いただければ余計な工程を踏まずに済みます。料金は機種・症状によって異なりますので、修理料金の目安のページで雰囲気を掴んでからご連絡いただいても構いません。

当店は大阪・松屋町スマエキとして 10:00〜19:00(水曜定休)で営業しております。来店修理に加え、遠方の方には配送修理(郵送依頼)もご用意。今回のような特殊事例も、状態を見せていただければ復旧の見通しをお伝えできます。交換した部品に対しては 3 ヶ月の動作保証(落下・水濡れなど使用上のトラブルは対象外、詳細は保証規約ページ)もご用意しております。困ったときは、ご自身で手を加える前にまずお問い合わせフォームから一報をいただけますと幸いです。

よくある質問

シーリング材や接着剤で画面のヒビを埋めるのは本当に危険ですか?

ヒビは表面だけでなく液晶層まで貫通していることが多く、塗布した液体が毛細管現象で内部に浸透します。当店の経験では、タッチ不良・センサー異常・防水パッキン破損へと症状が広がる事例が目立ちます。応急処置なら画面保護フィルムを上から貼るほうが安全です。

DIY 失敗後でも持ち込み修理は受け付けてもらえますか?

状態を確認させていただいたうえで、復旧の見通しをお伝えします。樹脂や接着剤が広範囲に固着している場合は、通常の画面交換に加えて樹脂除去工程が入るためお預かり時間が長くなる傾向があります。分解前のお見積もりは無料です。

修理にかかる時間の目安はどのくらいですか?

通常の iPhone 11 Pro 画面交換は 30 分目安(在庫・混雑状況により前後)ですが、今回の事例のように DIY 後の復旧では 1〜2 日お預かりすることもあります。お急ぎの場合は事前にご相談ください。

遠方からでも修理を依頼できますか?

配送修理にも対応しております。お問い合わせフォームから症状をお知らせいただき、発送先のご案内を受け取ってから端末をお送りください。返送までの目安日数も事前にお伝えいたします。

シーリング材が固着した本体は基板まで影響していますか?

今回の事例では基板への直接的な影響はなく、画面アセンブリ交換・バッテリー交換・内部清掃で復旧できました。ただし浸透範囲が広いケースでは基板まで影響することもあるため、症状が出たら早めにご相談いただくと工程を抑えられます。