2019 年から大阪・松屋町でスマートフォン修理を専門に対応している当店ですが、月に 2-3 件は「自分で何とかしようとして悪化した」端末が持ち込まれます。先日お預かりしたのは、画面割れの iPhone 11 を アクリル絵の具で液晶ムラを塗りつぶした という、これまでにあまり見たことのないケースでした。

結論から書くと、タッチ操作はほぼ完全に死んでいる状態。お客様ご自身でも「やってしまった」と自覚されており、最初の電話相談から来店まで半日ほどでした。事例として記録に残しておきたいので、ここで詳しく書かせていただきます。同じような同じ症状の他事例も合わせてご覧いただけます。

iPhone 11 screen-crack 修理事例

失敗の経緯 — なぜアクリル絵の具を塗ったのか

持ち込まれた iPhone 11 は、お客様の話では半年ほど前に落下させたもの。画面右上から斜めにヒビが走り、液晶の一部に黒い染みのような表示ムラが出ていたそうです。修理に出す時間が取れず、そのまま使い続けていたところ、「画面の黒い部分が気になって、似た色の絵の具で塗ったら目立たないのでは」 と思いついたとのことでした。

使ったのはお子様の図工用のアクリル絵の具。指で画面表面に薄く塗り広げ、ティッシュで拭き取る — というのを 2 度ほど繰り返したそうです。塗った直後はある程度きれいに拭き取れたように見えたものの、数時間後にロック解除をしようとしたところ、パスコード入力画面のテンキーが反応しない 状態に。再起動しても改善せず、当店にご連絡いただきました。

注意: アクリル絵の具は水性ですが、乾燥すると耐水性のあるプラスチック皮膜になります。スマートフォンの画面ガラスには、指紋防止の 疎油コーティング静電容量式タッチセンサー が組み合わさった精密な層構造があり、水性顔料であっても表面を覆ってしまうとタッチ反応が大きく低下します。

被害状況 — 顔料がタッチ層に浸透していた

到着した端末を診断台で確認したところ、症状は次の通りでした。

  • 画面表面、特に既存のヒビの内部に 白っぽい顔料の固着 が確認できる
  • テンキー領域および中央付近のタッチ反応がほぼゼロ。画面の隅(右下のホームインジケータ付近)だけ、たまに反応する
  • 液晶表示自体は生きており、Face ID とサイドボタン操作は正常
  • イヤースピーカー上部のフレーム隙間に、薄く絵の具が入り込んでいた

iPhone 11 の画面ガラスには無数の細かいヒビが入っており、そのヒビが 毛細管現象で顔料の溶剤を内部に吸い込んだ ようでした。タッチ層と液晶層の間に水性溶剤が入り込むと、静電容量の検出が著しく狂います。今回はそれが画面のほぼ全域で起きていた、というのが診断結果でした。

関連事例として、当店ブログでは過去に大阪・松屋町スマエキで対応した水濡れ後のタッチ不良なども取り上げています。原因は違いますが、症状の出方は今回と似ていました。

修理での回復 — 画面アセンブリ交換とフレーム清掃

診断後、お客様にお見積もりをお伝えし、ご了承いただいてから作業を開始しました。流れはざっと次のようになります。

  1. 分解前のデータ確認: Face ID は生きていたため、外部 Lightning キーボードを当店で接続してロック解除し、お客様立ち会いのうえバックアップ手順をご案内。ほとんどの修理でデータを保持したまま対応可能ですが、こうした重度のケースでは事前バックアップを推奨しています。
  2. 画面アセンブリ取り外し: 既存のヒビが大きく、外したガラスは粉々に近い状態でした。フレーム側に残った破片と顔料を、無水エタノールで時間をかけて除去。
  3. フレーム内清掃: イヤースピーカーメッシュとフロントカメラレンズに付着した微量の顔料を、綿棒で 30 分ほどかけて落としました。
  4. 新しい画面パネルへ交換: タッチ動作・True Tone・近接センサー・3D 表示を一通り確認し、防水テープを貼り直して組み戻し。
  5. 動作テスト: ロック解除、各種ジェスチャ、写真撮影、通話、Face ID をすべて確認。お預かり時間は約 60 分目安でしたが、清掃に時間を要し当日 90 分ほどかかりました。

修理後は技術基準適合確認のうえお引渡しいたします。今回のお客様には、当店のiPad画面割れ修理の流れと同じく、3 ヶ月の動作保証(落下・水濡れなど使用上のトラブルは対象外)についてもご説明しました。

今後への教訓 — 表面に何かを塗る前に

今回のケースから、事実として一つお伝えできるのは 「画面ガラスのヒビは、塞ぐ前に交換した方が結果として手間が少ないことが多い」 ということです。当店実績では、ヒビが入ったまま放置された端末は、ガラス内部からの水分やホコリの侵入で液晶側の不具合に発展するケースを、月に 3-4 件は見ています。

ご自身での対処としてよく聞くのは、市販の保護フィルムを上から貼る、瞬間接着剤を流し込む、ネイル用のレジン液で埋める、といった方法です。いずれも一時的に見た目は改善することがありますが、タッチ層への影響分解時の追加作業 という観点では、後から修理を依頼される際に手間が増える要因となります。今回のような顔料系も同様でした。

もし画面が割れてしまった場合、当店としては早めの相談をお勧めしています。来店だけでなく、遠方の方には郵送修理も対応しております。営業時間は 10:00〜19:00、水曜が定休日です。具体的な料金は機種・症状によって異なりますので、当店の修理料金の目安ページや修理ブログ一覧もご参照のうえ、お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

分解前のお見積もりは無料、お見積もり提示後のキャンセルも可能です(分解診断・部品発注後は所定の手数料が発生する場合があります)。今回のお客様も「来てよかった」と言っていただけました。机の引き出しに眠っているヒビ入り端末がある方は、そのまま使い続ける前に一度ご相談いただければと思います。

よくある質問

アクリル絵の具で塗ってしまった iPhone でも修理できますか?

症状によりますが、今回の iPhone 11 のように画面アセンブリ交換とフレーム清掃で復旧したケースは当店でもございます。タッチが効かない、表示が乱れる場合でも、まずは現物を診断させていただければと思います。

画面表面にレジンや接着剤を塗った場合も対応してもらえますか?

対応可能ですが、固化した樹脂を除去する追加作業が必要になることがあります。フレームへの浸透具合によって作業内容が変わるため、事前にお問い合わせフォームから状態をお伝えいただけると見積もりがスムーズです。

画面割れを放置するとどうなりますか?

経験上、ヒビからの微細な水分やホコリの侵入で液晶側の表示異常やタッチ不具合に発展することがあります。月に 3-4 件は放置から悪化したケースを当店で確認しているため、早めの相談をお勧めしています。

データはそのまま残りますか?

ほとんどの修理でデータを保持したまま対応可能ですが、今回のような重度のケースでは作業前のバックアップを推奨しております。Face ID やサイドボタンが生きていれば、当店でロック解除をご一緒にご案内することも可能です。

郵送修理にも対応していますか?

はい、大阪・松屋町の店舗まで郵送いただければ対応しております。営業は 10:00〜19:00、水曜定休となります。返送方法や梱包の目安はお問い合わせフォームよりご案内いたします。