2019年から大阪・松屋町で修理を続けてきましたが、水没のご相談は月に4〜6件ほど頂きます。中でも「自分で乾燥処置を試みたあとに動かなくなった」というケースは、夏場とお風呂シーズンに集中する印象でした。今回は実際に当店に持ち込まれたiPhone 7の事例を一つ取り上げ、何が起きていたのかを順を追って共有します。同じ症状の他事例もブログ内で扱っているので、合わせて参照頂ければと思います。

失敗の経緯 — 「IP67だから大丈夫」の落とし穴

持ち込まれたのはiPhone 7、購入から4年ほど経過した個体でした。ご利用者様によると、お風呂のフタの上に置いて動画を見ていたところ、湯船にそのまま落下。慌てて拾い上げたものの、画面は普通に映っていたため「IP67規格だから問題ないはず」と判断され、その日はタオルで外側を拭いただけで就寝。

iPhone 7 water-damage 修理事例

翌朝、画面が点いたり消えたりを繰り返すのに気付き、SNSで見かけた方法を試されたとのことでした。具体的には、密閉袋に米と一緒に入れて一晩放置、その後ドライヤーの温風を充電口とスピーカー付近に約10分間あてる、という処置です。さらに念のため、と低温オーブンで温める案も検討されたそうですが、こちらは思いとどまって頂けたようでした。

水没翌日のドライヤー乾燥は、内部に残った水分を蒸発させる前に基板や液晶のフレキ部分を加熱してしまい、結果として電解腐食を加速させる要因となります。経験上、お持ち込みの判断は早ければ早いほど、復旧率は上がる傾向にありました。

お持ち込みの段階で、すでに電源ボタンを長押ししても無反応。外観は綺麗な状態でしたが、SIMトレイを抜いた時点で内部から水滴と僅かに錆色の液体が確認できました。

被害状況 — 分解して見えた電解腐食の現場

当店で分解診断を行ったところ、想定以上に内部の状態は厳しいものでした。具体的には次のような所見です。

  • バッテリーコネクタ周辺に白い結晶状の付着物 — 電解腐食の典型的な症状
  • ロジックボード(基板)の上端から右側にかけて緑青色の酸化跡
  • 背面カメラのレンズ内部に曇り、撮影した画像にも影が映る状態
  • 下部スピーカーグリル内に水分残留、振るとわずかに水音
  • 液晶バックライト用フレキシブルケーブルの一部が変色

水没インジケーター(SIMトレイ奥にある小さな丸いシール)は完全に赤く染まっており、メーカー保証適用外であることもこの時点で確定。Apple公式の耐水テストは真水・常温・静止状態の条件で実施されているため、お風呂のような湯気・温度差・洗浄成分(入浴剤等)が加わる環境では、IP67/IP68の表記通りには性能が発揮されないというのが現場の感覚でした。

また、購入から4年経過していたこともポイントでした。耐水パッキンは経年で劣化しますし、過去の落下衝撃で見えない範囲にクラックが入っていた可能性も高く、結果として湯船の水が筐体内部に浸入する経路を作っていたようです。

修理での回復 — 基板洗浄と部品交換の手順

お見積もり提示後にご了承を頂き、復旧作業に入りました。iPad画面割れ修理の流れと基本的な工程は似ていますが、水没の場合は乾燥と洗浄に時間を割く必要があります。当店で実際に行った作業の流れは以下の通りです。

  1. 完全分解 — ロジックボードを筐体から取り外し、各シールド・コネクタも個別に外して内部の水分経路を全て露出させる
  2. 基板洗浄 — 無水エタノールおよびIPA(イソプロピルアルコール)で電解腐食部を溶解、超音波洗浄機で残留塩分を除去(目安として2回繰り返し)
  3. 部品交換 — 腐食したバッテリー、変色した液晶フレキ、内部曇りのある背面カメラユニットを純正同等品に交換
  4. 乾燥 — 専用乾燥庫で約2時間、内部水分を完全に飛ばす
  5. 動作試験 — 充電・通信・カメラ・スピーカー・センサー類を順に確認、復旧確認後にお引渡し

結果として、こちらのiPhone 7は無事に電源が入り、データもそのまま保持された状態でお返しすることが出来ました。ただし水没修理に関しては、基板損傷の度合いによってはデータ保持が難しいケースもあるため、事前バックアップの推奨は欠かせません。お預かり時間は当該事例で2日間でしたが、損傷範囲によってはさらに長くなる場合もあります。

修理後は技術基準適合確認のうえ、3ヶ月の動作保証(落下・水濡れなど使用上のトラブルは対象外)を付けてお引渡しの流れとなります。

今後への教訓 — 水没後の最善行動と判断基準

今回の事例から客観的に整理出来る教訓を、項目別にまとめました。

  • 耐水性能は経年劣化する — IP67/IP68は新品時の試験値。落下や経年で性能は低下していく
  • Apple公式テストは真水・静止条件 — お風呂の湯気、入浴剤、海水、洗濯機の遠心力は規格外
  • 米袋・ドライヤー乾燥は基板損傷を悪化させる場合がある — 加熱により内部結露と腐食反応が進行
  • 水没後は時間との勝負 — 通電を続けるほど電解腐食が進む。電源を切って乾いた布で外側を拭き、出来るだけ早く専門店へ
  • 水没インジケーターが赤く変色した時点でメーカー保証は適用外 — 民間修理店で物理的な復旧を検討する選択肢となる

当店では月に4件以上の水没修理に対応してきた経験から、機種・水没時間・水質・通電有無の4要素から復旧見込みを診断しています。お見積もりは無料、提示後のキャンセルも可能です(分解診断・部品発注後は所定の手数料が発生する場合があります)。

水没トラブルは判断の早さで結果が変わる症状の一つでした。「動いているから大丈夫」と思った段階で既に内部腐食が始まっているケースも多いため、迷ったらまずご相談頂ければと思います。修理ブログ一覧では他の水没事例や機種別の症状もまとめており、ご自身の状況に近い記事を探して頂ける構成にしています。大阪・松屋町スマエキでは来店修理に加えて配送修理(郵送依頼)にも対応しており、遠方の方からのお問い合わせも頂いています。料金は機種・症状によって異なりますので、修理料金の目安と合わせてお気軽にお問い合わせフォームからご連絡ください。

よくある質問

iPhone 7はIP67規格と聞きました。お風呂に落としても水没修理が必要ですか?

IP67は新品時に真水・常温・静止状態で実施した試験値となります。経年劣化や落下衝撃によりパッキン性能は低下しますし、お風呂の湯気・温度差・入浴剤などは試験条件外です。当店の経験上、購入から数年経過した個体ではお風呂程度の水没でも内部浸水するケースが多く見られました。

水没後にドライヤーや米袋で乾燥させても大丈夫でしょうか?

ドライヤーの温風は内部の水分を完全に蒸発させる前に基板やフレキ部品を加熱してしまい、電解腐食の進行を早める要因となる場合があります。米袋による吸湿も外側の水分には一定の効果が期待出来ますが、内部の水分や塩分には届きにくいのが実情です。可能な限り早めに専門店での分解乾燥・洗浄をご検討頂くと良いかと思います。

水没してから数日経過していますが、まだ修理出来ますか?

電解腐食の進行度合いによって復旧率は変わります。当店実績では数日経過後でも基板洗浄と部品交換で復旧したケースもありますが、長期間通電状態で放置されていた場合は損傷範囲が広がり修理が困難な場合もあります。まずは分解診断にお持ち込み頂ければ現状を確認の上、お見積もりをご提示いたします。

水没修理の場合、データは残りますか?

ほとんどのケースで基板修理によりデータを保持したまま復旧しておりますが、水没等の重度故障では基板損傷の度合いによってデータ保持が難しいケースもあります。事前のバックアップ推奨と、お預かり前のご説明を徹底しています。

大阪・松屋町まで来店出来ない場合、郵送での修理依頼は可能ですか?

配送修理にも対応しております。お問い合わせフォームより症状をお知らせ頂いた後、発送方法と梱包の注意点をご案内します。営業時間は10:00〜19:00(水曜定休)で、修理完了後は技術基準適合確認のうえご返送する流れです。