図書館で膝から落とした一枚 — お客様のお悩み

先日、当店に大学 4 年生の理系男子のお客様がご来店されました。卒論の追い込み中に大学の図書館で iPad Air を膝の上に置いて作業していたところ、立ち上がった瞬間にコトンと床に落とされたとのこと。気づいた時には画面右下から斜めにヒビが伸び、タッチが妙に飛ぶ状態でした。

「本当はそのまま提出日まで使い切るつもりだった」とおっしゃっていましたが、3 日ほど割れたまま使い続けるうちに、Apple Pencil の文字認識がガクガクになり、画面下半分のタップが反応したり無視されたり。ガラス片が指先に当たる感触も気になり始めて、さすがにこれは限界、と検索して当店までお越しいただいた、という経緯でした。

うちで iPad Air・Air 2 の画面割れをお預かりするのは月に 3〜4 件ほど。落下は机上から、椅子から、そして今回のような膝からが圧倒的に多いです。同じ症状の他事例もブログにまとめていますが、共通しているのは「割れてもしばらく動くから油断する」点。割れた直後は問題なく見えても、ガラス片が押し込まれてデジタイザ層を傷つけ、数日経ってからタッチが破綻していく流れが多いです。

受付直後の見た目チェックと診断

お預かりして最初にやるのは目視と通電確認でした。お客様の iPad Air は初代 (A1474、9.7 インチ Retina) で、外装は意外なほど無傷。落下角度のおかげでアルミボディは凹んでおらず、被害は前面ガラスに集中しているようでした。

ヒビは右下コーナーから左上方向へ斜めに 1 本走り、そこから細いひびが枝分かれ。ホームボタンの周辺にもガラス片の浮きがあり、Touch ID が反応しない状況でした。一方、表示自体は乱れもムラもなく綺麗。LCD パネルは無事で、割れているのは表面の前面ガラスとその下のデジタイザ層と判断しました。

タッチを確認するためにメモアプリで線を引いてもらうと、画面下 1/3 が完全に死んでおり、上半分も反応が遅い。Apple Pencil(本機種は非対応ですが指で代用)で軽く触っただけでも筆跡が途切れる状態。デジタイザの断線が複数箇所、と所見をお伝えしました。

iPad Air 初代と Air 2 では構造が大きく違います。Air 初代はガラスとデジタイザが一体で、LCD は別パーツ。Air 2 はガラス・デジタイザ・LCD が薄型化のため貼り合わせ(フルラミネーション)構造で、表面割れだけでもアセンブリ丸ごと交換になりやすい。今回は Air 初代だったため、ガラス+デジタイザの一体パーツのみ交換でいける見込みです。

分解前のお見積もりは無料で、提示後のキャンセルも可能です(分解診断・部品発注後は所定の手数料が発生する場合があります)。料金は機種・症状によって異なりますので、目安は修理料金の目安のページからご確認いただきました。

工程 — ガラス・デジタイザの分離と接着

iPad の前面ガラス交換は、スマートフォンよりも手間がかかります。理由は単純で、面積が広いぶん両面テープの接着面が長く、ガラスを温めながら少しずつ浮かせる必要があるからです。

まずヒートマットで本体表面を 60 度前後にじっくり温め、テープの粘着力を弱めます。次に薄いピックを 4 隅から差し込み、内側のフレキシブルケーブルを傷つけないよう、ホームボタン側と Wi-Fi アンテナ側の位置を頭に入れながら少しずつスライド。Air 初代の場合、ホームボタンのケーブルは右下のすぐ内側を走っているので、ピックの差し込み深さを 3mm 以下に抑えます。

ガラスを開いたら、ホームボタンとデジタイザのコネクタを慎重に外し、割れたガラスを撤去。フレームに残った両面テープのカスは、専用のクリーナーとマイクロファイバーで一度すべて剥がし切ります。ここを横着すると、新しいガラスが浮く・気泡が入る原因になるので、当店ではいつも 15〜20 分ほどかけて完全清掃しています。

新しい前面ガラス・デジタイザのアセンブリは、純正同等品質のパーツを在庫から選定。コネクタの形状とホームボタンの取り付け穴のサイズを仮合わせで確認してから、お客様の元のホームボタンを丁寧に移植しました。Touch ID は基板側のチップとペアリングされているので、ホームボタン自体を交換すると指紋認証が使えなくなります。元のボタンを生かすのが原則です。

新品の両面テープを四辺と内枠に貼り直し、本体に押し込んだあとは、専用のクランプで均等に圧着して 30 分程度寝かせる。ここで急いで通電テストをすると、テープが完全に接着しないまま再びガラスが浮きやすくなります。落下や水濡れなど使用上のトラブルは保証対象外なので、最初の接着で勝負を決める意識で取り組みました。

完成後 — 動作確認とお引渡し

お預かりからおよそ 90 分。在庫があれば iPad Air 初代の前面ガラス交換は当日返却が可能なケースが多く、今回も来店から 2 時間以内にお渡しできました(在庫・混雑により前後します)。

動作確認では、画面四隅のタッチ感度、文字入力時の追従、Touch ID の反応、スリープボタンとホームボタンの押し心地、スピーカー出力、Wi-Fi 受信、明るさセンサ、加速度センサまでひと通りチェック。お客様にも一緒に画面右下を何度もタップしてもらい、「あ、戻ってる」と驚いた声をいただいたのが印象的でした。修理後は技術基準適合確認のうえお引渡しいたします。

お渡し時には保護フィルムの装着もご一緒に。卒論執筆で文字を打つ機会が多いとのことだったので、指紋が目立ちにくいアンチグレアタイプをおすすめしました。割れたまま使い続けるとデジタイザ層が押し込まれてサブピクセル(LCD 側)にダメージが伝わり、表示までやられてしまうことがあります。早めにご相談いただいて良かった事例です。

当店では交換した部品に対して 3 ヶ月の動作保証をお付けしています(落下・水濡れなど使用上のトラブルは対象外、詳細は保証規約ページ)。修理後の流れはiPad画面割れ修理の流れでも詳しくご案内中です。同じような事例は修理ブログ一覧にも蓄積しているので、似た症状の方は読み物としてもどうぞ。

2019 年から松屋町でスマートフォン・タブレットの修理を専門に対応している大阪・松屋町スマエキでは、来店修理に加えて配送修理(郵送依頼)も承っています。営業時間は 10:00〜19:00、水曜定休。卒論や仕事の佳境で iPad が動かない、というご相談はお問い合わせフォームよりお気軽にどうぞ。

よくある質問

iPad Air と iPad Air 2 で修理の違いはありますか?

あります。Air 初代はガラス・デジタイザと LCD が別パーツなので、表面割れだけならガラス側の交換で済むケースが多いです。Air 2 はガラス・デジタイザ・LCD が貼り合わせ(フルラミネーション)構造のため、表面ヒビだけでもアセンブリ全体の交換となる傾向があります。

割れたままで Apple Pencil や Touch ID が反応しなくなった iPad でも直せますか?

ガラス・デジタイザを新しいアセンブリに交換することで、タッチ反応の改善が見込めます。Touch ID については、当店ではお客様の元のホームボタンを移植する形で対応しますので、多くのケースで指紋認証も継続して利用いただけます。

預ける時間はどのくらいかかりますか?

iPad Air 初代の前面ガラス交換であれば、お預かりから 90 分〜2 時間程度を目安にしています(在庫・混雑により前後します)。お急ぎの方は来店前にお問い合わせフォームからご連絡いただければ、在庫の事前確認が可能です。

分解しないで見積もりだけ出してもらえますか?

はい、分解前のお見積もりは無料で承っています。提示後のキャンセルも可能ですので、まずは状態を見せていただいてから判断いただいて差し支えありません(分解診断・部品発注後は所定の手数料が発生する場合があります)。