お客様の悩み

先日、iPad Pro 9.7をお使いのお客様が当店にご来店されました。「充電マークは出るのに、電源ボタンを長押ししても反応しないんです」とお困りの様子。お話を伺うと、前日まで普通に使えていたが、バッテリーが切れて充電器を繋いだまま放置していたら、次に触ったときには画面が真っ暗になったとのこと。充電ケーブルを挿すとリンゴマークが一瞬出るだけで、すぐ消えてしまう繰り返し。よくあるパターンですが、今回は少し様子が違いました。当店では月に数件、同様の症状でお問い合わせをいただきます。バッテリーの劣化か基板のトラブルか、まずは診断で切り分けが必要です。

実は、充電マークが表示されるということは、充電回路やバッテリー自体に最低限の電気は流れている証拠です。しかし、電源が保持できない、または起動シーケンスの途中で止まるという場合は、基板上の電源管理ICやシステムLSIに異常が疑われます。このお客様の場合も、バッテリーを一旦外して外部電源で起動を試みましたが、やはり同じ症状。バッテリー単体の電圧は正常値でしたので、ほぼ基板の問題と判断しました。当店では2019年の創業以来、数多くのiPad基板修理を手がけてきました。特にiPad Pro 9.7は薄型設計ゆえに衝撃に弱く、基板のクラックや半田剥がれが発生しやすい印象です。診断には専用のテスターとマイクロスコープを使い、目視では見えないマイクロクラックを探します。また、電源投入時の電流値パターンを解析することで、どのブロックで異常が出ているか絞り込みます。今回もその手法で、電源IC周辺のコンデンサがショート状態であることを特定しました。同機種の他症状の修理事例もご参照ください。

診断

基板の電源ラインにあるコンデンサがショートしていました。このわずかな不具合が起動を妨げていたのです。

お客様にご説明し、修理の同意を得ました。基板修理は専門技術が必要ですが、当店では経験豊富なスタッフが対応します。料金は症状により異なるため、正確な見積もりをお伝えしました。お客様も納得され、修理を依頼されました。

診断で用いた機材は、デジタルマイクロスコープと熱画像カメラ。基板を拡大すると、電源ICの隣にある積層セラミックコンデンサにひび割れを発見。このコンデンサが内部短絡を起こしており、電源ICが過電流を検出してシャットダウンしていたのです。通常、この規模のコンデンサは基板を曲げた程度では壊れませんが、iPad Pro 9.7は薄くて剛性が低いため、ちょっとした圧力で基板が撓みやすい。お客様の使用状況を考えると、バッグの中で圧迫されたのかもしれません。こうした事例は月に2-3件はあります。修理方法は、不良コンデンサを慎重に取り外し、同容量の新品に交換。その後、周辺回路のチェックと通電試験を行います。なお、基板修理はほとんどの場合データを保持したまま対応可能ですが、重度の水没や衝撃の場合は事前バックアップをお勧めします。当店では技術基準適合確認のうえお引渡しいたします。また、交換部品には3ヶ月の動作保証(落下・水濡れ等の使用上トラブルは対象外)を付けています。同じ症状の他事例お見積もりのお問い合わせもお役立てください。

修理工程

いよいよ修理工程です。基板を固定し、マイクロスコープ下でピンセットとはんだごてを使い、不良コンデンサを丁寧に取り外します。周囲の部品に影響を与えないよう、温度と時間には細心の注意を払います。新しいコンデンサを半田付けし、洗浄後、通電確認。その後、組み立て前に簡易起動テスト。見事にAppleロゴが表示され、ホーム画面まで進みました。ひとまず成功です。ただし、まだ本組み立てはせず、もう一度細かいチェックを行います。

正常起動を確認しました。しかし、これで終わりではありません。バッテリーの充放電テストも必要です。

その後、バッテリーを接続し、充放電サイクルを2回実施。充電が正常に行われ、バッテリー残量も正しく表示されることを確認。タッチパネルの応答、スピーカー、カメラ、Wi-Fi、Bluetoothなど全機能をテストし、すべて問題なし。お客様にご連絡し、お引渡しとなりました。お客様は「まさか基板だったとは驚きましたが、データも無事で本当に助かりました」と喜んでいただけました。当店では他にも様々な修理メニューを取り揃えております。他の修理メニューもぜひご覧ください。また、当店の修理ブログ一覧修理ブログ一覧では、他の修理事例も掲載しています。店主からの一言──今回の修理を振り返って、やはりiPad Pro 9.7は基板トラブルが多い機種だと実感しました。薄さゆえの弱点ですが、しっかりと修理できる技術があれば、長くお使いいただけます。後日、お客様から「その後も快適に使えています」とメールをいただき、安堵しました。

よくある質問

充電マークは出るのに起動しない原因は?

バッテリー劣化や基板故障が考えられます。当店では無料診断で原因を特定します。

修理時間はどのくらい?

基板修理の場合、症状により異なりますが、お預かり時間は約1〜2時間程度を目安としてください。

データは消えますか?

基板修理でもデータ保持を最優先に対応しますが、万が一に備えバックアップをお勧めします。

保証はありますか?

交換した部品に対して3ヶ月の動作保証(落下・水濡れ等の使用上トラブルは対象外)を付けています。