水没した端末を「とにかく温めて水分を飛ばす」という発想は、ネット記事や知人のアドバイスとして耳にすることがあります。先日、その発想を実行された結果、症状を悪化させてしまったiPhone 7が当店に持ち込まれました。当店では月に3〜4件、水没後のDIY処置で状況が悪化した端末を診ています。今回はそのうちの一例を、本人の同意のもと記録として残します。同じ症状の他事例もあわせてご覧いただけます。

iPhone 7 water-damage 修理事例

サウナで温めて乾かす——その発想の落とし穴

持ち込まれたお客様は、洗面所でiPhone 7を約 10 秒ほど水没させてしまったとのこと。すぐに引き上げて電源を切ったところまでは正解でしたが、その後の判断が分かれ目となりました。「内部の水分を蒸発させるにはサウナが最適なのでは」と思い立ち、自宅近くの施設に持ち込み、80℃前後の室内に約 30 分間置いたそうです。

確かに水分は蒸発します。ところがiPhone 7 の内部には、フロントパネルと本体を密着させる防水接着剤、ロジックボード固定用のマウント、バッテリー両面テープといった、熱に弱い部材が複数使用されています。サウナの環境はこれらの許容温度を超えるため、内部構造そのものが変質してしまう恐れがあるのでした。

注意:水没後の高温乾燥(ドライヤー長時間照射・サウナ持ち込み・電子レンジ・オーブン等)は、水分を飛ばす効果よりも、内部接着剤の溶解・バッテリー膨張・基板腐食促進という副作用のほうが上回るケースが多く見られます。経験上、常温で電源を切った状態のまま、できるだけ早く修理店に持ち込むのが堅実です。

持ち込み時の被害状況——内部はこうなっていた

カウンターでお預かりして開腹したところ、想定以上のダメージが確認されました。まず防水パッキンの黒い接着剤が溶けて液状化し、フロントパネルの内側からロジックボード周辺にまで流れ込んでいる状態。バッテリーは外装フィルムが波打ち、わずかに膨張の兆候が見られました。

さらにロジックボード上のシールドカンを開けると、水没による白い塩分結晶(腐食痕)が点在。これは水没そのものによるダメージで、サウナ加熱とは別問題ですが、加熱によって水分が一度蒸発し再凝結する過程で、塩分が基板の細部にまで広がっていたようです。当店では水没端末の腐食状況を確認する際、シールドカンを外してマイクロスコープで観察します。今回のケースは、塩分結晶が CPU 周辺と Wi-Fi モジュール付近の両方に確認できました。

お客様には診断結果と、復旧までに必要な工程をお伝えしました。修理料金の目安は機種・症状によって異なりますので、分解前のお見積もりは無料、お見積もり提示後のキャンセルも可能(分解診断・部品発注後は所定の手数料が発生する場合があります)とご案内しています。

当店での復旧工程——重度故障として4ステップで対応

今回はバッテリー交換だけでは済まず、重度故障扱いでの修理工程となりました。流れは以下のとおりです。

① ロジックボード取り外し+超音波洗浄。基板を本体から外し、専用洗浄液を使った超音波洗浄機で塩分結晶と溶解した接着剤の残渣を除去します。所要時間は約 1 時間。② バッテリー交換。膨張兆候のあるバッテリーは、たとえ起動しても再使用は危険なため、新しい部品に交換しました。③ フロントパネル接着剤の再施工。溶けて流出した防水接着剤を完全に除去し、新しい防水パッキンで再封止。④ 動作テスト+技術基準適合確認。タッチ感度、フロントカメラ、Face ID 不要機種ですがホームボタンの感圧反応、Wi-Fi/Bluetooth、充電、スピーカー等を一通りチェックしました。

結果、無事に起動し、データも保持できる形でお返しできました。ただし水没修理は、このように当日中に動いてもしばらく後に再不調が出るケースもあるため、修理完了後はできるだけ早く重要データのバックアップを取っていただくよう、口頭でご案内しています。iPad画面割れ修理の流れと同じく、水没修理も診断→見積もり→お預かり→復旧の段取りで進みます。

水没トラブルから学ぶ——次に同じ状況になったら

今回のケースから、水没後の対応として実践しやすい指針をまとめておきます。第一に、水没直後は電源を入れない・触らない・充電しない。第二に、常温で電源 OFF のまま、ジップロック等に乾燥剤と一緒に入れて持ち運ぶ。第三に、できるだけ早く修理店で診断を受ける。サウナ・ドライヤー・米びつといった俗説の方法は、水分を飛ばす効果に対して副作用が大きく、結果として修理費用も時間も増えてしまう傾向にあります。

当店は 2019 年から大阪・松屋町(〒540-0017 大阪市中央区松屋町住吉 6-26)で、スマートフォン・タブレットの修理を専門に対応してきました。営業時間は 10:00〜19:00、水曜定休。水没・基板修理など重度故障は、機種・症状によっては当日返却可能なケースもありますが、お預かりに数日いただく場合もございます。事前のバックアップ(iCloud / iTunes 等)を強く推奨しています。修理後は技術基準適合確認のうえお引渡しいたします。交換した部品に対して 3 ヶ月の動作保証をお付けしています(落下・水濡れなど使用上のトラブルは対象外、詳細は保証規約ページ)。

水没後の対応にお困りの方は、まずは 大阪・松屋町スマエキ までお問い合わせフォームよりご連絡ください。過去の修理事例は 修理ブログ一覧 にもまとめています。

よくある質問

水没したiPhoneを温めて乾かすのは効果がありますか?

ドライヤー短時間程度の風当てなら表面の水分除去には役立ちますが、サウナ・電子レンジ・長時間の高温乾燥は内部接着剤やバッテリーを傷める副作用のほうが大きいことが当店の経験上多く見られます。常温で電源 OFF のまま、できるだけ早く修理店での診断を受けるのが堅実です。

水没後にすぐ電源が入っても安心して使い続けて良いですか?

水没直後に動作していても、内部で腐食が進行し数日〜数週間後に不具合が出るケースが珍しくありません。一度水没した端末は、たとえ動いていても基板洗浄を含めた点検をおすすめします。重要データは早めにバックアップをお取りください。

水没修理はデータを保持したまま対応できますか?

ほとんどの修理でデータを保持したまま対応可能ですが、水没・基板修理等の重度故障では事前バックアップを強く推奨しています。基板損傷の程度によってはデータ復旧が困難になる場合もあるためです。

iPhone 7 のような旧機種でも水没修理を受けてもらえますか?

iPhone 7 を含む旧機種にも対応しています。ただし部品の在庫状況や入手難易度によって、お預かり期間が長くなる場合があります。お問い合わせフォームより機種と症状をお知らせいただければ、目安をご案内いたします。

修理にかかる時間はどれくらいですか?

症状によって異なります。バッテリー交換だけならお預かり時間は約 30 分目安(在庫・混雑により前後)、水没等の重度故障は超音波洗浄や乾燥工程が入るため数時間〜数日お預かりするケースが多いです。診断後にお見積もりとあわせてご案内します。