突然の起動不能でご来店された 35 歳男性のお客様

先日、大阪市中央区にお住まいの 35 歳の男性のお客様が、iPhone 11 を片手に来店されました。お話を伺うと、職業はシステム開発企業の現役プロジェクトマネージャー。日中は社内とクライアント先を行き来し、夜は自宅でも仕様書の確認や Slack のレビューを行うとのことで、端末は完全に業務インフラの一部となっていたようです。

iPhone 11 board 修理事例

「朝、目覚ましで起こされてアラームを止めようとしたら、画面がリンゴマークと真っ暗を 5 秒おきに繰り返していて、操作が一切できないんです」。前日の就寝前までは普通に動作していて、落下も水濡れも心当たりがないとのことでした。当店ではこの「いわゆるリンゴループ」のご相談を月に 3〜4 件いただいており、今回もまずは落ち着いてヒアリングからスタートしました。

お客様にとって深刻なのは、明後日にクライアントとの大型リリース会議が控えていて、議事メモも認証アプリも通話履歴もこの 1 台に集約されているという事実です。バックアップは「半年ほど前に iCloud に取った気がする」というやや曖昧な状態。同じ症状の他事例でも、業務クリティカルな端末ほどバックアップが古いという傾向が見られます。

診断で見えた NAND コントローラ周辺のトラブル

まず DFU モードでの復元を試みましたが、iTunes 側でエラーコード 9 が出て途中停止。続いて専用治具を使い、基板の電流値をミリアンペア単位で計測したところ、起動シーケンスの途中で電流が跳ね上がり、本来 CPU から NAND へ流れるべきデータラインの信号が乱れていました。

iPhone 11 は 2019 年発売モデルで、当店の経験上、発売から 5 年以上を経過したあたりから NAND フラッシュとそのコントローラ周辺の故障が増えてくる印象です。ストレージそのものが壊れているケースもありますが、今回は周辺のパッシブ部品(コンデンサ・抵抗)の劣化と、コントローラ IC のはんだクラックが原因と判断しました。落下も水濡れも無いのに突然動かなくなるのは、こうした経年劣化が背景にあるようです。

診断結果をホワイトボードに書き出してお客様にご説明したところ、「画面交換やバッテリー交換とは違う、基板そのものの修理になるんですね」と少し緊張された様子でした。当店では分解前のお見積もりは無料で、お見積もり提示後のキャンセルも可能です(分解診断・部品発注後は所定の手数料が発生する場合があります)。料金は機種・症状によって異なるため、お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

顕微鏡下で進めた基板修理の工程

ご了承をいただいたうえで、本格的な基板修理に着手しました。作業はマイクロスコープ(最大 200 倍)を覗きながらの繊細な工程です。まずバッテリーを取り外して通電を遮断し、ロジックボードを慎重に取り出して洗浄します。次に該当の NAND コントローラ IC をホットエアーで取り外し、ランド面を整え直しました。

取り外した IC の足を再はんだ付け(リボール)し、データラインのテストパッドで導通とインピーダンスを再確認。同時に周辺の劣化したコンデンサ 2 個と抵抗 1 個を新品に置き換えています。実装後、もう一度治具に繋いで電流カーブを取り直すと、今度はきれいに iPhone 11 標準の起動カーブを描いてくれました。

この一連の工程に、診断時間を含めて約 4 時間半。基板修理は機種・症状によってお預かり期間が前後しますが、軽度なものなら当日返却となる場合もあります。今回はクライアント会議までの時間がタイトだったため、お客様には松屋町近辺のカフェで待機していただきつつ、進捗を 1 時間おきにメッセージでお知らせする形を取りました。iPad画面割れ修理の流れとも共通しますが、基板系のお預かり時の進捗共有は当店として大切にしている部分です。

復旧後のお客様と、リンゴループから学べること

修理後は iPhone を 30 分以上連続起動させ、Apple ロゴ → ホーム画面 → 各種センサーチェック → Wi-Fi/モバイル通信 → カメラ → Face ID と一通りテスト。データも修理前と同じ状態で残っており、お客様の Slack も認証アプリの履歴も無事でした。受け取られた瞬間「会議の資料、全部この中なんです、本当に助かりました」とほっとした表情をされていたのが印象的です。

修理後は技術基準適合確認のうえお引渡しいたします。今回は交換した部品に対して 3 ヶ月の動作保証(落下・水濡れなど使用上のトラブルは対象外、詳細は保証規約ページ)。お帰りの際にお伝えしたのは「iPhone 11 のような少し年数の経った端末は、月 1 回でも構わないので iCloud か PC への自動バックアップを設定しておきましょう」という点です。基板系の故障は前触れがほぼ無く、ある日突然来ます。

当店、大阪・松屋町スマエキは 2019 年から大阪市中央区松屋町住吉で iPhone・iPad の修理を専門に対応しており、来店修理だけでなく郵送での配送修理にも対応しています。営業時間は 10:00〜19:00、定休日は水曜日。リンゴループ・突然の起動不能・充電できないといった基板系の症状でお困りの際は、まずは現状をお聞かせください。事例の蓄積や費用感については修理ブログ一覧修理料金の目安もあわせてご覧いただけます。

よくある質問

iPhone 11 のリンゴループはデータを残したまま修理できますか?

多くのケースで、ストレージ上のデータを保持したまま基板修理に対応可能です。ただし NAND チップ自体の物理破損まで進んでいる場合はデータ取り出しが難しくなることもあるため、可能な範囲で事前バックアップを推奨しています。

基板修理のお預かり期間はどれくらいですか?

iPhone 11 の NAND コントローラ修理の場合、診断を含めて 3〜5 時間が目安です。混雑状況や追加症状の有無により当日返却となる場合もあれば、お預かりとなるケースもあります。

修理前のお見積もりは有料ですか?

分解前のお見積もりは無料で、お見積もり提示後のキャンセルも可能です。なお、分解診断・部品発注後は所定の手数料が発生する場合があります。

落下も水濡れもしていないのに、なぜ突然リンゴループになるのですか?

経年によるはんだクラックや、コンデンサ・抵抗などのパッシブ部品の劣化が背景にあるケースがほとんどです。発売から年数が経った機種ほど、当店実績では基板系のご相談が増える傾向にあります。

郵送でも基板修理を依頼できますか?

対応可能です。大阪・松屋町まで来店が難しいお客様は、お問い合わせフォームから配送修理の流れをご案内いたします。営業時間は 10:00〜19:00、水曜定休となります。