DIY のきっかけと失敗の経緯

持ち込まれたのは 2018 年発売の iPhone XS Max。前面ガラスは右上から斜めに 3 本ほどの亀裂が走っていて、タッチは反応するものの、ご本人いわく「割れ目から雨水が入るのが怖くて、ホームセンターで買った車向けの撥水スプレーガンで前面を吹いた」とのこと。動機としては理解できる行動でした。

ところが、塗布後すぐに Face ID が「もう一度顔を登録してください」と出るようになり、夜間にロック解除しようとしたところ、画面下半分にうっすら虹色のムラが浮かんでいることに気づき、当店までお持ち込みいただきました。来店時の状態は、Face ID 完全失敗・表示色ムラ・受話口付近の細かな水滴痕、というものでした。

注意: 自動車用・建材用の撥水スプレーには、フッ素系樹脂や有機溶剤が含まれているものが多く、スマートフォンのコーティング層・接着剤・赤外線センサーカバーを変質させる成分が入っている場合があります。スマートフォン専用と明記されていない液剤を、割れた画面に直接吹き付けるのは想定外の使い方となります。

被害状況 — 何が壊れていたのか

受付後、当店の作業台で分解診断を行いました。XS Max の Face ID は、受話口左右に並んだ赤外線ドットプロジェクター、フラッドイルミネーター、赤外線カメラの 3 点が連動して動く仕組みです。今回はそのうち、ドットプロジェクター前面の樹脂カバーに白く曇った膜が固着していました。これが赤外線の投射パターンを散乱させ、認証エラーを起こしていた状態です。

さらに、割れたガラスの隙間から液剤が回り込み、液晶の偏光フィルターと OCA(光学透明接着剤)の境界に侵入。これが下半分の虹色ムラの正体でした。基板側は通電チェックを行い、幸い腐食は確認されませんでした。来店から分解診断完了までは 40 分目安、お客様には店内でお待ちいただきました。

同じ機種・同じ症状に当てはまる方は、同じ症状の他事例もあわせてご確認いただければと思います。

当店での復旧手順

復旧は段階的に進めました。まず前面パネル(ガラス + 液晶 + デジタイザー一体)を新品互換品に交換。次に、Face ID ドットプロジェクター前面の汚染樹脂カバーを慎重に外し、超音波洗浄液で残留した樹脂膜を分解、純水でリンスしてから乾燥。XS Max 以降の Face ID モジュールはシリアルが基板と紐付いているため、ドットプロジェクター本体の交換ではなく「カバー側を清掃 + 投射光路の再キャリブレーション」で再生する方針を採りました。

組み戻し後、暗室と通常照明下で顔登録テストを 3 回ずつ実施。すべて 1 秒以内に認証成立を確認しました。下半分の色ムラも液晶交換で解消。受話口の防水ガスケットも新品に張り替え、技術基準適合確認のうえ即日お引渡しとなりました。今回のケースでは、お預かりから返却まで約 2 時間 30 分でしたが、機種・症状によっては当日返却が難しいケースもあります。

当店の修理事例は 修理ブログ一覧 にも随時掲載中です。iPad の画面修理依頼が増えている時期もあるため、流れは iPad画面割れ修理の流れ をご参考ください。

同じ失敗を繰り返さないために

今回の事例から学べることは 3 点。第一に、画面が割れた状態のスマートフォンに防水を後付けしようとする発想自体は理にかなっていますが、市販の汎用撥水剤の多くは「乾いた塗装面・ガラス面に薄く膜を作る」ことを想定しており、ガラスの亀裂・センサー・接着剤・偏光フィルムへの作用までは保証されていません。第二に、Face ID は赤外線という「目に見えない波長」で動いているため、見た目には透明でも赤外線を散乱させる物質が付着すると、即座に機能が止まります。第三に、液晶側に液剤が入ると数日で広範囲に染みが拡大し、初期対応が早いほど交換費用を抑えられる傾向にあります。

覚えておきたい: 画面が割れた状態は「水・埃・液剤がセンサー周辺に到達しやすい状態」と捉えていただき、防水フィルムや市販コーティングで対応するより、できるだけ早めに専門店で前面パネルごと交換するほうが、結果的に故障範囲を狭く抑えられるケースが多いです。

当店スマエキは大阪市中央区松屋町住吉 6-26、地下鉄松屋町駅から徒歩 1 分の立地で、2019 年から iPhone・iPad・Android の修理を専門に対応しています。営業は 10:00〜19:00、水曜定休。来店修理に加え、配送修理(郵送依頼)もお受けしています。月に 3-4 件は今回のような「自分で何かを試した結果、想定外の症状が増えてしまった」というご相談を実際にお受けしており、機種ごとの構造に合わせた復旧方針をご提案しています。

持ち込みをご検討の方は、大阪・松屋町スマエキの店舗情報をご確認のうえ、お問い合わせフォームよりご相談ください。費用感を先に知りたい方は 修理料金の目安 もご参照いただけます。分解前のお見積もりは無料、お見積もり提示後のキャンセルも可能です(分解診断・部品発注後は所定の手数料が発生する場合があります)。

よくある質問

画面割れの iPhone に市販の撥水スプレーを吹いて大丈夫ですか?

スマートフォン専用と明記されていない撥水剤は、コーティング層・接着剤・センサーカバーを変質させる成分が入っている場合があります。割れた画面の隙間から液晶や Face ID 側に液剤が回り込んだ事例も実際にあるため、当店としては割れた状態での自己塗布は推奨しておりません。

Face ID が壊れた場合、修理で復旧できますか?

症状によります。今回のような「赤外線投射光路の汚染」であればカバー清掃と再キャリブレーションで戻ることが多く、ドットプロジェクター本体や基板側の故障が原因の場合は、Apple 純正修理のみで対応となるケースもあります。来店時に分解診断のうえ判断いたします。

DIY 後でも修理は受け付けてもらえますか?

受け付けています。分解履歴がある端末でも、状態を確認したうえで対応可否と方針をご案内しています。お預かり時間や費用は、機種・症状・部品状態によって異なります。

Face ID と画面交換は同日に終わりますか?

今回のケースでは約 2 時間 30 分で完了しましたが、部品在庫や混雑状況、汚染範囲によって前後します。お急ぎの場合は事前にお問い合わせフォームよりご相談ください。