先日、ご来店されたお客様の iPhone 13 を見て、思わず手が止まりました。背面が浮き上がるほどバッテリーが膨らんだ状態で、しかも画面の表面には何やら粘着質のシミ。お客様いわく、ネット記事で「湿気を吸えば膨張が止まる」と読み、ペット用のおしっこシート(高吸湿ポリマー入り)で端末を挟んで一晩置いたとのことでした。当店では月に 3-4 件、こうした DIY 対処後の持ち込みがあるのですが、今回のケースは特に被害が深刻でした。

事の経緯 — おしっこシートで挟んだ一晩

お客様は 2 年ほど前に購入した iPhone 13 を毎日お使いで、3 ヶ月前から徐々に背面が浮いてきたことに気づいておられました。バッテリー膨張は経年劣化で起きる症状の一つで、当店でも 2019 年から数えきれないほど対応してきました。本来であればその時点で交換のご相談をいただきたかったのですが、お客様は「自分で何とかできないか」とインターネットで対処法を検索されたそうです。

iPhone 13 battery 修理事例

そこで目に入ったのが「湿気が原因で膨張するから乾燥させればよい」という、出所のあやしい情報でした。手元にあったペット用のおしっこシートを 2 枚、端末の前後に当てて輪ゴムで固定。一晩経って取り出したところ、画面下部にうっすら茶色いシミが広がり、電源を入れたら表示が乱れ、本体が手で触れないほど熱を持ち始めた、という流れでした。

ご注意:高吸湿ポリマー入りシートには、水分と反応する化学物質が含まれます。膨張したリチウムイオンバッテリーは内部で化学反応が進行している状態で、外から薬剤を当てるとさらにリスクが高まります。湿気を吸うどころか、被害を拡大させる可能性が極めて高い対処です。

持ち込み時の被害状況

店頭で診断したところ、症状は三つに分かれていました。一つ目は本体筐体の歪み。膨張バッテリーが内側からフレームを押し上げ、画面パネルが 1mm ほど浮いていました。二つ目は液体侵入。シートから染み出した薬剤が画面の接着部から内部に回り込み、ディスプレイのフレキシブルケーブル接点に付着していたようです。三つ目は熱暴走の兆候。電源オフ状態でも本体下部が 40 度以上の温度を保ち続けていました。

とくに二つ目の液体侵入は厄介でした。普通の水ではなく粘性のある吸湿ジェルが固化しかけていたため、通常の水没修理よりも除去に手間がかかります。同じ症状で過去に対応した 同じ症状の他事例 でも、シート系・乾燥剤系の DIY 後は通常より作業時間が伸びる傾向がありました。経験上、膨張バッテリーは時間経過とともに発火リスクが上がるため、この日はその場でお預かりして即座に隔離保管しました。

当店での復旧作業

作業の手順としては、まず膨張したバッテリーを慎重に切り離す工程から始めました。膨らんだセルは衝撃や穿孔で発火する恐れがあるため、専用の絶縁工具で接着剤を緩め、防火容器に移して隔離。次に基板を取り外し、薬剤が付着した接点と液晶のフレキシブルケーブルを iPropanol(IPA)で丁寧に洗浄しました。

このとき幸いだったのは、基板側のチップやコネクタには腐食が及んでいなかったことです。シートの薬剤がもう半日長く触れていたら、銅箔の腐食でロジックボード交換が必要になっていたでしょう。診断後、新品のバッテリーセルへ交換し、液晶パネルも内部接点が変色していたため同時に交換となりました。

動作確認では、起動時の発熱・タッチ反応・FaceID・スピーカー出力をひととおりテスト。お預かり時間はバッテリー単体交換であれば約 30 分目安ですが、今回は薬剤洗浄と画面同時交換が入ったため 4 時間ほどお預かりしました(在庫・混雑により前後)。iPad画面割れ修理の流れ と工程は似ていますが、バッテリー絡みは「先に膨張セルを隔離する」段取りが追加で入ります。

今後への教訓 — 膨張に気づいたら触らないでください

このお客様にもお伝えしたのですが、バッテリー膨張は症状としてはわかりやすい部類に入ります。背面パネルや画面が浮く、本体が机の上で揺れる、充電中に妙に熱い、といったサインが揃った時点で、内部のセルは既に危険域です。ここで「自分で何とかしよう」と乾燥剤・冷却スプレー・吸湿シート・冷凍庫保管などを試すと、ほとんどのケースで状況が悪化します。

覚えておきたい三点
① 膨張に気づいた時点で電源を切る
② 充電・通電を止める
③ そのまま動かさず修理店に持ち込む

ご自身での修理やインターネットで購入した部品での DIY が広まっているのは事実ですが、リチウムイオンバッテリーは扱いを誤ると発火・破裂につながる部材です。膨張だけであればバッテリー交換で済むところが、今回のように画面・洗浄・診断まで含めると修理範囲が一気に広がってしまいます。料金は機種・症状によって異なるため、お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。分解前のお見積もりは無料、お見積もり提示後のキャンセルも可能です(分解診断・部品発注後は所定の手数料が発生する場合があります)。

当店、大阪・松屋町スマエキ は 2019 年から来店修理と配送修理(郵送依頼可)で対応しております。営業時間は 10:00〜19:00、水曜定休。同じく iPhone 13 のバッテリー周りでお困りの方は、過去の 修理ブログ一覧 や、症状別の 修理料金の目安 もご参照ください。交換した部品に対しては 3 ヶ月の動作保証(落下・水濡れなど使用上のトラブルは対象外、詳細は保証規約ページ)を付けております。修理後は技術基準適合確認のうえお引渡しいたします。

今回のお客様も、引き渡し時には「最初から相談していればよかった」とおっしゃっておられました。膨張は怖い症状ですが、早めに動けば交換だけで済むことがほとんどです。気になるサインを見つけたら、触る前にまずご相談ください。

よくある質問

バッテリーが膨らんだ iPhone 13 はそのまま使い続けても大丈夫ですか?

発火・破裂の危険があるため、使用を中止して充電もお止めください。電源を切り、動かさずに修理店までお持ちいただくのが無難です。

DIY で乾燥剤や吸湿シートを使うと膨張は治りますか?

膨張はバッテリーセル内部の化学反応で起きており、外から湿気を吸わせても止まりません。薬剤入りシートはむしろ被害を広げる場合があります。

バッテリー交換のお預かり時間はどれくらいですか?

iPhone 13 のバッテリー単体交換は約 30 分目安です(在庫・混雑により前後)。ただし発熱や液体侵入を伴う場合はさらにお時間をいただきます。

画面まで影響が出ていた場合、両方修理が必要ですか?

症状によります。表示異常やタッチ不良が出ているなら画面交換も併せておこなうことが多く、診断後にお見積もりをお出しします。

配送での修理依頼は可能ですか?

はい、郵送でのご依頼に対応しております。お問い合わせフォームよりご連絡いただければ、送付方法と流れをご案内いたします。