海水浴帰りに駆け込まれたお客様のお話

先日、当店に「海から上がったあと、iPhoneの電源が安定しないんです」とiPhone 13を握りしめて飛び込んで来られたお客様がいらっしゃいました。聞けば、和歌山の海水浴場で半日泳いだ際、防水ケースに入れずズボンのポケットへ。途中で波をかぶった瞬間、画面が一瞬チカチカしたものの、その時点ではまだ動いていたとのことでした。

iPhone 13 water-damage 修理事例

夜になって自宅で充電しようとした時に異変が出たそうです。電源は入るのに数分で落ち、また勝手に立ち上がる。Lightning端子からは塩のジャリッとした感触。当店では海水での水没相談を、夏場は月に5〜7件ほどお受けしており、正直なところ「またこのパターンか」というのが第一印象でした。

ご来店時、まずお伝えしたのは「重度の水没は事前バックアップ推奨」という点。海水トラブルは基板修理のリスクを伴うため、データが既にiCloudに同期されているか、最後にPCバックアップを取ったのはいつか、お客様と一緒に確認しました。同じ症状の他事例でも触れていますが、海水は時間との勝負です。

分解前の診断 — 海水はなぜ厄介か

真水なら乾かして復活するケースもありますが、海水はそうはいきません。塩化ナトリウムが基板の銅配線と反応し、通電したまま放置すると電気分解で腐食が一気に進みます。お客様には「持ち帰った後、ご自身で米びつに入れたり充電を試したりしていませんか」と確認したところ、ドライヤーを5分ほど当てたとのこと。これも実は逆効果で、温風が水分を内部の奥に押し込んでしまうのでした。

当店の診断は外観チェックから始めます。SIMトレイを抜いて内部の水没インジケーターを確認すると、見事に赤く変色していました。続いて充電端子をライトで照らすと、白い結晶(塩の析出物)が層になって見えます。この時点で「分解洗浄+腐食パーツ交換」コースをご提案させていただきました。

分解前のお見積もりは無料で、提示後のキャンセルも可能です(分解診断後・部品発注後は所定の手数料が発生する場合があります)。料金は症状によって異なりますので、詳細は修理料金の目安のページでもご案内しています。

基板洗浄と腐食パーツ交換の工程

お預かり後、作業台で本体を慎重に開腹します。バッテリーコネクタを外して通電を完全に止めるのが最優先。通電したまま洗浄液をかけると、ショートして余計に被害が広がるためです。

iPhone 13は背面ガラスを残したまま画面側から開ける構造で、防水パッキンが粘着で固定されています。海水を浴びたとはいえ、パッキンの隙間から侵入したのはごくわずかな量。とはいえ、ロジックボードの右下、ちょうどLightningコネクタ付近の銅パッドが青緑色に変色しているのが見えました。経験上、この色が出ると通電後の腐食が一定時間進んでいる証拠となります。

基板を本体から取り外し、超音波洗浄機で2回に分けて洗います。1回目は塩分を中和する専用洗浄液、2回目はイソプロピルアルコールで仕上げ。洗浄後、ルーペで配線パターンを1ヶ所ずつ確認し、腐食で断線していたコンデンサ2個と、ICチップ周辺の保護ダイオードを交換しました。Lightningコネクタ自体も塩で内部が侵されていたため、新品に差し替え。

組み立て前、防水パッキンも新品に交換します。一度水没した端末はパッキンが劣化しているため、再装着しても元の防水性能には戻らない点をお客様にもお伝えしました。

復旧後の動作確認とお引渡し

仮組みの段階で電源を入れると、すんなりとリンゴマークが立ち上がりました。30分間の通電テストで電源が落ちないことを確認、続けて充電速度・スピーカー・各種センサーをチェック。Face IDも問題なく通り、お客様にも店頭で実機を触っていただいて動作確認となりました。

お預かり期間は2日間。海水水没の場合、軽症なら当日返却できることもありますが、今回のように腐食が見られるケースでは、基板乾燥と再洗浄の時間を含めて2〜3日いただくのが目安です。

修理後は技術基準適合確認のうえお引渡しいたします。交換した部品に対しては3ヶ月の動作保証(再度の水濡れ・落下など使用上のトラブルは対象外)。お客様には「次は防水ケースを買います」と笑っていただきました。

当店は2019年から大阪・松屋町(中央区松屋町住吉6-26)で大阪・松屋町スマエキとして営業しており、来店修理のほか配送修理にも対応しています。営業時間は10:00〜19:00、水曜定休。iPad画面割れ修理の流れと同様、まずはお問い合わせフォームから症状をお知らせいただければ、こちらから返信いたします。他のケーススタディは修理ブログ一覧からご覧くださいませ。

よくある質問

海水で濡れたiPhoneは、まず何をすればいいですか?

電源が入っていれば即座に切り、充電やドライヤーは使わないでください。米びつ保管も内部に水分を残すためお勧めしません。電源を切った状態で、できるだけ早くお持ち込みいただくのが望ましいです。

海水水没でもデータは残せますか?

軽症であればデータを保持したままお返しできるケースもありますが、海水のように腐食を伴う重度故障では基板修理が必要となり、復旧できない可能性もあります。事前のバックアップを強く推奨しています。

修理にどれくらい時間がかかりますか?

症状によって異なります。軽い水没で当日お返しできることもありますが、腐食が進んでいる場合は基板洗浄と乾燥のため2〜3日お預かりするのが目安となります。お預かり時にお伝えします。

修理後また水に濡れても大丈夫ですか?

一度分解した端末は防水パッキンを新品に交換しても、元の防水性能と同等にはなりません。海水浴やプールでは防水ケースの併用をおすすめしています。