ご来店のきっかけ——東淀川区から松屋町まで
先日、大阪市東淀川区にお住まいの 30 代男性のお客様が、当店までご来店されました。お聞きすると、通われているフィットネスジムでトレーニング後にロッカーを開けた瞬間、バッグの中で倒れていたスポーツドリンクのボトルから中身が漏れ、一緒に入れていた iPhone XS にしっかり染み込んでいたとのこと。気付いた時には画面がチカチカと点滅し、その後 10 分ほどで完全に画面が真っ暗になったそうです。
「とりあえず米の中に埋めておいたほうがいいですか」というご質問もいただきましたが、これは経験上あまりおすすめしておりません。米が水分を吸う前に、糖分や塩分が基板の上で固まってしまうほうが先だからです。慌ててご来店いただいた判断のほうが、はるかに復旧確率を上げてくれます。
当店では月に 3〜4 件ほど、こうした「飲み物水没」の iPhone をお預かりしております。とくに夏場とジムのシーズンは増える印象でした。同じ症状の他事例もブログで紹介しておりますので、判断の参考になればと思います。
診断——スポーツドリンクが基板に与える影響
お預かりしてまず行うのが、目視と顕微鏡での内部確認です。iPhone XS は 2018 年発売の機種で、IP68 等級の防水性能があるとはいえ、これは「真水・常温・短時間」を前提にした規格となります。スポーツドリンクのように糖分・塩分・酸味料が混ざった液体は、別物と考えてください。
裏蓋を開け基板を取り出すと、案の定、ロジックボード周辺にうっすらと結晶化した糖分の層が確認できました。電源 IC の足元には軽い緑青(銅の腐食痕)も。お客様にはルーペで実物を見ていただきながら、「この白い結晶が乾いた砂糖、緑のところが腐食です」と一つひとつ説明させていただきました。
水没修理で大切なのは、見えている水気を拭くことではありません。基板の細かなチップの「足の裏」にまで入り込んだ糖分と塩分を、いかに残さず洗い出すかが勝負となります。ここを省略すると、一時的に電源が入っても 1 〜 2 週間で再発するケースが多いのです。
診断結果として、お客様には「液晶バックライト IC の周辺が怪しいですが、まずは超音波洗浄でリセットしてから電源を入れてみましょう」とご提案。分解前のお見積もりは無料、お見積もり提示後のキャンセルも可能ですので、まずはお気軽にご相談いただけたらと思います。
修理工程——超音波洗浄から再組み立てまで
当店の水没復旧は、おおまかに 4 工程に分かれます。①分解と SIM・バッテリーの取り外し、②基板の超音波洗浄、③乾燥と顕微鏡での再点検、④仮組み立てと通電確認です。
iPhone XS の場合、ロジックボードは A12 Bionic を中心とした 2 階建て構造で、上下を分離してから洗浄する必要があります。今回はスポーツドリンク特有のベタつきが強かったため、専用の電子基板用洗浄液で 2 度洗いを実施しました。最初のすすぎで茶色く濁った洗浄液が、2 度目には透明に近づいてくれて、ひと安心。
乾燥には 70 度の恒温槽でじっくり時間をかけます。早く返したい気持ちはあるのですが、ここを焦るとあとで水分残りが原因の不具合が出やすいため、目安として 90 分前後はキープしています。
仮組み立て後、まずはバッテリーをつながず、安定化電源で適正電流を流して反応を確認しました。電源 IC への突入電流は正常、A12 への供給も問題なし。続いてバッテリーを接続して起動を試したところ、リンゴマークが点灯し、そのまま見慣れたロック画面まで立ち上がってくれました。お客様にもガラス越しに見ていただいたのですが、「お、生き返った」と思わずつぶやかれていたのが印象的でした。
修理工程の流れは機種を問わず近いところがあるので、iPad画面割れ修理の流れも合わせてご覧いただくと、当店のスタンスが伝わりやすいと思います。
完成後——東淀川区へお戻りになる前に
復旧後は最低 24 時間、店内のテストベンチで Wi-Fi・通話・カメラ・Face ID・センサーなど一通りの動作を確認します。今回は Face ID が初回起動時にだけ認識が遅れたものの、再登録で改善。ほかは大きな後遺症もなく、お引き渡しに進めました。
お客様には次の 3 点をお伝えしています。第一に、データのバックアップを iCloud または PC に取ること。基板修理・水没等の重度故障は事前バックアップ推奨ですが、今回は救済が間に合いました。第二に、糖分入り液体に触れたあとは、見た目が動いていても腐食が進行するケースがあるため、3 ヶ月程度は様子見をしてほしいということ。第三に、もし再発した場合の窓口について。交換や調整した部分には 3 ヶ月の動作保証(落下・水濡れなど使用上のトラブルは対象外、詳細は保証規約ページ)をお付けしています。
スマエキは 2019 年から大阪市中央区松屋町住吉で営業している、スマートフォン・タブレットの修理を専門に対応する町のお店です。大阪・松屋町スマエキへは、地下鉄長堀鶴見緑地線「松屋町駅」3 番出口から徒歩すぐ。東淀川区から地下鉄でお越しの場合も、乗換 1 回で 30 分前後でした。営業時間は 10:00〜19:00、水曜定休となります。
料金は機種・症状によって異なりますので、修理料金の目安をご参考いただいたうえで、お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。同じような事例や、過去の修理記録は修理ブログ一覧にも掲載しております。修理後は技術基準適合確認のうえお引渡しいたします。
よくある質問
スポーツドリンクで水没した iPhone XS は、何日以内に持ち込むのが望ましいですか?
経験上、糖分・塩分入りの液体は乾くと結晶化して基板を腐食させるため、当日〜翌日のご持参を目安にお考えいただけたらと思います。電源を切ったうえで充電もせずにお持ちいただくと、二次故障のリスクを抑えやすいです。
電源が入っているうちは大丈夫ですか?
起動しているように見えても、内部で腐食が進行しているケースが多くあります。動いているうちに洗浄したほうが、データを保持したまま対応できる確率が上がる傾向です(基板修理・水没等の重度故障は事前バックアップ推奨)。
iPhone XS のような旧モデルでも修理対象ですか?
はい、当店では 2018 年発売の iPhone XS を含む旧モデルも対応しております。部品の在庫・状態によりお預かり期間が変動しますので、まずはお問い合わせフォームよりご相談ください。
水没修理に保証はつきますか?
交換した部品に対して 3 ヶ月の動作保証をお付けしております(落下・水濡れなど使用上のトラブルは対象外、詳細は保証規約ページをご確認ください)。水没は症状が再発する可能性があるため、目安として 1 〜 2 週間は様子見をおすすめしております。