先日、有馬温泉から戻られたお客様が「ポケットに入れていただけなのに iPhone X が真っ暗になった」と来店されました。実はこのパターン、当店では月に 3-4 件のペースで遭遇します。脱衣所やサウナ室、露天風呂周辺は、本人の自覚以上に水分と熱がスマホへ侵入する環境。今回は温泉地・銭湯帰りに発生しやすい iPhone X の水濡れトラブルについて、Q&A 形式でお話しします。
温泉旅行で iPhone を持ち込む際の注意は?
まず大前提として、iPhone X は IP67 等級の防水性能を持っていますが、これは真水での試験値。温泉水や石けん成分が混ざった湯気は試験対象外で、防水パッキンも経年で劣化しているのが実情です。2017 年発売の機種ですから、現在お使いの個体はすでに 7 年以上経過していることになります。

当店の経験上、ロッカーに入れずに脱衣所のカゴへ置いたまま入浴した方、岩盤浴や露天風呂エリアにスマホを持ち込んだ方からのご相談が多い印象でした。湿度が 90% を超える空間に 30 分以上スマホを置くと、Lightning コネクタやスピーカー孔から微量の水分が侵入し、後日になって突然の不具合となって現れます。
同じような症状の事例は 同じ症状の他事例 にもまとめていますので参考までに。
サウナ室の高温で iPhone が壊れる?
はい、これは水濡れより深刻になるケースが多くあります。Apple の公式仕様では iPhone の動作温度は 0〜35 度、保管温度でも -20〜45 度まで。一方、フィンランド式サウナは 80〜100 度、ロウリュ後の体感はさらに上がります。バッテリーセルが膨張し、内部の接着剤が溶け出し、Face ID のドットプロジェクタが歪む、というケースを当店でも確認しております。
「サウナ室の中で使うつもりはなかった、脱衣所のロッカーに入れただけ」というお客様も少なくありません。ただ古いロッカーは断熱が甘く、サウナ室の壁を共有している箇所だと内部温度が 50 度を超えることもあるようです。経験上、温泉旅館での宿泊翌日にバッテリーが急に減る、画面に縦線が出始める、という後日症状が一番多いパターンとなります。
露天風呂のミストでも水濡れは起こる?
こちらもよく聞かれる質問です。結論から言うと、霧状の湯気でも侵入します。湯気は粒子が非常に細かく、防水パッキンの隙間や経年でひび割れた接着部から毛細管現象で内部へ吸い込まれていきます。湯気自体は温度が高いため、冷えるときに iPhone 内部で結露を起こすのが厄介な点でした。
当店で分解した個体には、ロジックボードの隅に白い結晶状の付着物が見つかることがあります。これは温泉成分のミネラルが結露と一緒に固着したもの。普通の水道水とは性質が異なります。
海水・温泉成分による腐食は普通の水と違う?
大きく違います。真水であれば乾燥させればある程度回復するケースもあるのですが、温泉水(特に塩泉・硫黄泉)や海水は導電性が高く、通電している状態で内部に入ると瞬時にショートを起こします。さらに乾燥後もミネラル成分が残り、数週間〜数ヶ月かけて基板を腐食させていく特徴があるためです。
当店では 2019 年の創業以来、関西圏の温泉地(有馬・城崎・白浜)から戻られたお客様の iPhone を多く拝見してきました。塩泉での水濡れは、当日は動いていても 1〜2 週間後に充電不良や画面不点灯となる「遅発性」のトラブルが特徴的。これが厄介なところで、温泉から帰った直後は普通に使えてしまうため、お客様も「水濡れが原因とは思わなかった」と仰います。
iPad で同様のトラブルがあった方は iPad画面割れ修理の流れ も参考にしてください(基本的な流れは iPhone と共通です)。
防水ケースは温泉で安全?
市販の防水ケースは IPX8 を謳う製品でも、想定はプールや海。高温多湿のサウナ・温泉環境はメーカー保証範囲外であることがほとんどです。Aquapac や DiCAPac などの有名ブランドでも、取扱説明書には「高温の湯・温泉での使用は推奨しない」旨の記載があります。
当店のお客様で、防水ケースに入れたまま露天風呂で使用された方が、ケース内で結露が発生し、Face ID とインカメラが曇って復旧しなかった例もありました。ケースは外部からの水を防いでくれますが、温度差による内部結露までは防げません。経験上、サウナ・温泉環境ではロッカーに入れて電源を切っておくのが現実的な選択肢となります。
水濡れ後の応急処置の優先順位
もし温泉やサウナから戻って iPhone X の調子がおかしいと感じたら、優先順位は次のとおりです。
第一に、すぐに電源を切ること。動作している状態が一番危険で、通電によるショートが基板を一気に痛めます。第二に、Lightning ケーブルを絶対に挿さないこと。「とりあえず充電してみよう」が一番やってはいけない行動でした。第三に、SIM トレイを抜いて内部の空気を逃がし、タオルで外側の水分を吸い取ります。
巷でよく言われる「乾燥剤入りジップロック」「お米の中に埋める」は、表面の水分には効きますが、すでに基板内部へ侵入したミネラル分は除去できません。本格的な対処は基板洗浄が必要になります。当店では超音波洗浄機での基板クリーニングに対応しており、関西圏のお客様には来店修理のほか、郵送依頼も承っております。詳しくは 修理料金の目安 をご覧ください。
温泉地での緊急修理対応はある?
残念ながら、有馬温泉や城崎温泉の現地には、iPhone の基板修理に対応する専門店はほとんどありません。観光地のキャリアショップでは「水濡れは本体交換のみ、データは消える」という案内になることが多いようです。
当店は大阪・松屋町(〒540-0017 大阪市中央区松屋町住吉 6-26)に店舗を構えており、関西圏の温泉地からはアクセスしやすい立地。10:00〜19:00(水曜定休)で営業しておりますので、温泉旅行から大阪へ戻られたタイミングでお持ち込みいただくケースが多くなっています。郵送修理にも対応しているため、すぐに大阪へ来られない遠方の方からのご依頼も承ってきました。
2019 年から松屋町でスマートフォン・タブレットの修理を専門に対応してまいりました。温泉・サウナ後の水濡れは「動いているうちに早めに診断」が鉄則。大阪・松屋町スマエキ までお気軽にご相談ください。他の修理事例は 修理ブログ一覧 にも掲載しています。
iPhone X はリリースから 7 年を超え、内部のパッキンが経年劣化している個体も増えてきました。温泉旅行や銭湯帰りに「あれ?」と思ったら、まずは電源を切ってお問い合わせフォームよりご相談を。分解前のお見積もりは無料、お見積もり提示後のキャンセルも可能(分解診断・部品発注後は所定の手数料が発生する場合があります)。料金は症状によって異なりますので、まずはメッセージでお気軽にどうぞ。
よくある質問
温泉から帰った直後は普通に動いていますが、修理は必要ですか?
塩泉や硫黄泉に触れた可能性がある場合、当日動作していても 1〜2 週間後に不具合が出るケースが多くあります。早めの診断をおすすめします。当店ではお見積もりまで無料で対応しております。
サウナ室にうっかり持ち込んでしまいました。すぐに直せますか?
症状や内部の状態によって対応時間は異なります。バッテリー膨張のみであれば交換で対応できますが、基板へのダメージがある場合は洗浄+部品交換となり、お預かり期間も延びる傾向にありました。来店時に診断のうえご案内いたします。
データを残したまま水濡れ修理は可能ですか?
ほとんどの修理でデータを保持したまま対応可能ですが、水濡れの場合は基板の状態次第で結果が変わります。事前バックアップを推奨しております。診断時に現状をお伝えのうえ、お客様に判断いただいています。
温泉地から大阪に戻れないので郵送したいのですが対応していますか?
はい、郵送修理に対応しております。お問い合わせフォームよりご連絡いただけば、発送方法・梱包のご案内をお送りいたします。関西圏外からのご依頼も多数承ってまいりました。
iPhone X の修理用部品はまだ流通していますか?
2026 年現在、iPhone X 向けの基板部品・バッテリー・画面ユニットは継続して入手可能です。ただし純正同等品は在庫変動がありますので、お問い合わせ時に在庫状況をご確認ください。