脱水音に気づいた瞬間、画面は真っ暗だった
先日、当店に大阪市住吉区にお住まいの 40 代女性のお客様がご来店されました。洗濯機の脱水中に「ガタッ」と妙な音が鳴り、フタを開けて初めてご家族の作業着のポケットに iPhone X が入っていたことに気づかれたそうです。脱水途中、つまり水と回転の両方を浴びた状態。
取り出した瞬間、画面は真っ暗。電源ボタンを押しても何の反応もなく、Lightning コネクタには細かな水滴。ご本人は「専業主婦なので連絡帳とお子さんの写真が全部この中にあって…」と、来店時はかなり動揺されていました。実はこのパターン、当店では月に 3-4 件は遭遇する典型的なケースです。

そのままお米に入れる、ドライヤーで乾かすという民間療法もネット上には残っていますが、内部に残った水分が基板の腐食を進めるだけというのが経験上の結論。住吉区から松屋町まで車で 20 分ほどで来てくださり、当日午後の早い段階でお預かりとなりました。
分解してみると──基板の四隅に白い粉
受付後、まず外観をライトで照らしながらチェック。スピーカーの網目部分に水滴が残り、SIM トレーの内側にあるリキッドコンタクトインジケーター (LCI) はくっきり赤に変色。これは Apple が公式に採用している水濡れ検知シールで、赤くなった時点で正規修理の対象外となるため、この段階で「正規店持ち込みは難しいです」とお伝えしました。
iPhone X は背面ガラスを温めて剥がす作業からスタート。ヒーティングマット 100℃前後で 3 分ほど温め、吸盤で持ち上げます。内部を開けると、ロジックボード周辺に薄く水が広がった跡。バッテリーコネクタの周辺と Face ID モジュール下に、乾燥した水滴の跡が白い粉状の腐食として残っていました。経験上、この白い粉が出始めると 1 日でも放置すれば回路の銅箔が酸化していきます。
診断はバッテリー、ロジックボード、Face ID ケーブル、Taptic Engine、ワイヤレス充電コイルの 5 系統を順番に確認。電源系のショートはなく、バッテリーは膨張していなかったため、まずは基板洗浄から進めることに決定。同じ症状の他事例でも、24 時間以内のお預かりであれば洗浄のみで復旧するケースが多いです。
超音波洗浄と乾燥に約 4 時間
当店の作業ベンチでは、まずロジックボードを完全に取り出し、シールド (金属カバー) を専用ピンセットで外します。これで基板の表裏すべてが洗浄液に触れる状態に。続いて 99% 以上のイソプロピルアルコールを満たした超音波洗浄機に基板を浸け、40kHz で 8 分間の洗浄を 2 セット行いました。iPad画面割れ修理の流れのページでも触れていますが、超音波の周波数と時間は機種によって調整します。
洗浄後はマイクロスコープで端子の腐食痕を一つずつ確認。Face ID コネクタ近くにわずかに緑青 (りょくしょう) が残っていたため、ファイバーペンと細筆で物理的に除去。ここを手抜きすると、修理直後は動いても 2〜3 週間でまた症状が出ることがあります。
乾燥工程は風通しのよい防塵ケースで自然乾燥 60 分 + ヒートステーション 50℃で 30 分を組み合わせます。基板の積層が多い iPhone X では、一気に温度を上げず段階的に水分を飛ばすのが当店流。すべて合わせて分解からここまで約 4 時間。お客様には先に商店街でお昼を取っていただき、夕方に再度ご来店いただく形にしました。
電源 ON、Face ID も復活──夕方の再会
仮組みして電源を投入すると、リンゴマークが表示。ロック画面、Face ID 登録の再認証、Wi-Fi 接続まで一通り通り、写真フォルダもご家族のアルバムも無事でした。お渡し時に画面を見せた瞬間、お客様の表情が一気にゆるんだのが印象的でした。「データそのまま」は症状によって保証できませんが、今回のように発生から数時間以内のご来店であれば、多くのケースで写真や連絡先を維持したまま復旧できています (基板の損傷度合いによります)。
お渡し時にお伝えした注意点は 3 つ。① 一度水を浴びた端末は内部の防水シールが劣化しているので、今後はお風呂場やキッチン近くでの使用を控えること、② 充電ポートの奥に湿気が残っている可能性があるため、当日は急速充電ではなく標準充電を使うこと、③ 万一バッテリーの持ちが急に悪くなったら、半年以内であれば再診断にお越しいただくこと。交換した部品 (今回は基板洗浄のみで部品交換は無し) には 3 ヶ月の動作保証を付けていますが、再水濡れは保証対象外となります。
当店スマエキは大阪市中央区松屋町住吉 6-26 にあり、2019 年からスマートフォン・タブレットの修理を専門に対応しています。営業時間は 10:00〜19:00、水曜定休。来店修理だけでなく郵送修理にも対応していますので、住吉区はもちろん、堺市や奈良方面からのお客様もいらっしゃいます。詳しくは大阪・松屋町スマエキのページか、修理料金の目安をご覧のうえ、お問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。他の事例もまとめた修理ブログ一覧もあわせてどうぞ。
よくある質問
洗濯機で濡らしてしまった iPhone は、何時間以内に持ち込めばいいですか?
経験上、できるだけ早いほどデータ保持率は上がります。当店実績では発生から 24 時間以内のお預かりであれば、基板洗浄のみで復旧するケースが多いです。お米に入れる・ドライヤーで乾かすといった対処は内部腐食を進めることがあるため、電源を切った状態でそのままお持ちください。
Apple の正規修理に出すのと何が違いますか?
iPhone の SIM トレー内側にある水濡れ検知シール (LCI) が赤く変色していると、Apple の正規サポートでは本体交換扱いとなり、データもリセットされます。当店のような第三者修理店では、基板を分解して洗浄・部分修理を行うため、データを保持したまま戻せる可能性が残ります (重度の腐食を除く)。
修理後に同じ症状が再発することはありますか?
目安として、洗浄後 2〜3 週間以内に再症状が出るケースは、基板の腐食痕が一部残っていた可能性があります。当店では交換した部品に対して 3 ヶ月の動作保証 (落下・水濡れ等の使用上のトラブルは対象外) をお付けしていますので、不安があれば再診断にお越しください。
住吉区から松屋町まで遠いのですが、郵送修理は可能ですか?
はい、郵送修理にも対応しています。お問い合わせフォームから症状をご連絡いただければ、発送方法と必要な情報をご案内します。水濡れ症状の場合は、発送前に電源を切り、乾燥剤と一緒に密封していただけると、輸送中の追加腐食を抑えやすくなります。