2019年から大阪・松屋町でスマートフォン修理を続けていますが、水没のご相談は月に20件前後あり、その中の1割ほどがご自身での対処で症状が広がってからの来店となっています。先日も、お風呂で水没させたiPhone 11 Pro Maxを冷凍庫で30分ほど凍らせるという対処をされた40代の男性からのご依頼があり、結果として基板腐食とフロントガラスのヒビ、両方を抱えての持ち込みでした。今回は実際の作業記録を残しておきます。

お風呂で水没→冷凍庫30分という自己流対処の経緯

お預かり時にお伺いした流れはこうでした。夜にお風呂で動画を観ていて湯船に落とし、すぐに拾い上げて電源を切られたそうです。ここまでは間違いではありません。問題はその後で、ネットで「冷凍庫に入れると水分が抜ける」という情報を見つけ、ジップロックに入れて冷凍庫に約30分入れたとのこと。取り出した直後は画面が一瞬点いたものの、解凍されるにつれて画面に虹色のシミと黒い斑点が広がり、最終的にホームボタン側のガラスにヒビが入って電源も入らなくなった、という状態でした。

注意点として: 水没した端末を冷凍庫で凍らせる対処は、内部の水分を「氷」として固定する一方で、解凍時に水分が一気に再分布するため、初期に届いていなかった基板の隙間まで水が入り込むケースがあります。さらに低温→常温の急激な温度差はガラスや有機ELパネルに負担をかけるため、外装にヒビが入る二次被害も実際に発生します。

お客様ご本人も「逆効果だったかもしれない」と来店時に話されていました。気持ちはよく分かります。深夜で修理店も開いておらず、何か手を打ちたくなるものです。

分解診断で見えた基板の腐食とガラス割れ

翌朝お預かりして、まずは画面を取り外して内部を確認しました。Lightningコネクタ側に薄い緑青のような色味があり、これは水分とバッテリーの微弱電流で金属端子が腐食しはじめた典型的なサインでした。さらに気になったのが、ロジックボードのCPU周辺に広がっている白い結晶状の付着物。これは水道水・お風呂のお湯に含まれるミネラルが、解凍と乾燥の繰り返しで結晶化したもので、放置すると端子間の絶縁を破ってショートを引き起こすことがあります。

iPhone 11 Pro Max は防沫・耐水性能 IP68 等級の表記があり「水深4mで最大30分」というスペックですが、これは新品時・真水での試験値です。3年以上経過した実機・お風呂のお湯(界面活性剤入り)・パッキンの経年劣化、これらが重なれば内部浸水は普通に起こります。当店実績では、IP68端末の水没で内部に水が入っていなかったケースは月に1〜2件程度しかありません。

ガラスのヒビは右下から左上に向かって走っており、有機ELパネル自体には浸透していない状態でした。同じiPhoneの同じ症状の他事例と同様、外装のダメージと内部浸水を切り分けて見積もるのが基本となります。

復旧作業:超音波洗浄→乾燥→部品交換の3工程

復旧の流れはこのようになりました。

1. 分解とロジックボード単体の取り出し。バッテリーコネクタを最初に外し、内部の通電を完全に止めてから作業に入ります。お預かりが翌朝で、お客様が水没させた当日からは10時間以上経過していたため、すでに基板の電解腐食はある程度進んでいる前提で進めました。

2. 専用洗浄液による超音波洗浄。基板を専用の溶剤に浸し、超音波で結晶化したミネラルと腐食残渣を洗い落とします。当店では水没基板の洗浄に毎月10〜15枚ほど対応しており、CPU周辺・PMIC周辺・カメラコネクタ部の3エリアを重点的にチェックします。今回は1回目で取り切れず、2サイクル目を回しました。

3. 乾燥と部品交換。専用乾燥庫で2時間ほど乾燥させたあと、フロントパネル(ガラス+有機EL)を新品に、Lightningコネクタも腐食が見られたためモジュール単位で交換しています。バッテリーは膨張兆候はなかったものの、水没後の劣化は早いため交換を提案し、お客様も同意されました。

組み上げ後の動作確認で電源・タッチ・Face ID・カメラ・スピーカー・通信、すべて正常に戻りました。お預かりから返却まで約3日でしたが、機種・症状によっては当日返却可能なケースもあります。iPad画面割れ修理の流れと基本工程は近いですが、水没はとにかく洗浄と乾燥に時間が必要となります。

水没時に「やってはいけないこと」と次の一手

今回のケースから言えることをまとめておきます。

水没後にやらない方がよい行動の例: 冷凍庫に入れる(温度差で結露が広がる/外装が割れる)、ドライヤー温風で乾かす(熱でパネルや接着剤が傷む)、米びつに入れる(米粒や粉が内部に入り込む)、振って水を出そうとする(届いていない部分まで水が回る)、電源を入れて動作確認する(通電でショートが進む)。

逆に、ご自身でできて意味のある対処は2つだけです。①すぐに電源を切る、②ケース・SIMトレイを抜いて自然乾燥させながら修理店に連絡する。それ以上は経験上、状況を悪化させる方向に働くことの方が多いようです。

当店は大阪・松屋町スマエキで2019年から営業しており、10:00〜19:00(水曜定休)で来店修理に対応しています。遠方の方は配送修理(郵送依頼)も承っており、福岡・北海道からのご依頼実績もあります。分解前のお見積もりは無料、お見積もり提示後のキャンセルも可能です(分解診断・部品発注後は所定の手数料が発生する場合があります)。修理料金の目安は機種・症状によって異なりますので、お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。修理ブログ一覧にも水没・基板修理の事例を継続的に掲載していますので参考にしていただければ。

水没は時間との勝負と言われますが、実際は「最初の判断」で結果が大きく変わります。深夜の水没でも、翌朝の開店時間まで電源を入れずに乾いた場所に置いておく、それだけで救済率はかなり上がる印象です。修理後は技術基準適合確認のうえお引渡しいたしますので、ご相談だけでも結構です。

よくある質問

水没したiPhoneを冷凍庫で凍らせる対処はなぜ良くないのですか

解凍時に水分が一気に内部で再分布し、最初は届いていなかった基板の隙間まで水が入り込むことがあります。また低温→常温の急激な温度差でガラスや有機ELパネルに負担がかかり、ヒビが入る二次被害が起きるケースを当店でも複数確認しています。

iPhone 11 Pro MaxはIP68等級ですが、お風呂なら大丈夫ではないのですか

IP68の試験値は新品時・真水での条件です。経年でパッキンが劣化していたり、お風呂のお湯は界面活性剤を含むため水よりも侵入しやすくなります。当店実績では、IP68端末の水没で内部に水が入っていなかったケースは月に1〜2件程度です。

水没してから何時間以内なら復旧できる可能性がありますか

経験上、12時間以内に電源を切って湿気のない環境に置けていれば復旧率は高い傾向にあります。ただし通電を続けたり熱を加えた場合は、数時間でも基板腐食が進行することがあるため、症状によります。

ガラスにヒビが入った場合、画面と水没で別々に費用がかかりますか

工程としてはフロントパネル交換と基板洗浄の2作業になりますが、まとめて作業させていただく形となります。料金は機種・症状によって異なりますので、お問い合わせフォームよりご連絡ください。

遠方ですが配送で修理を依頼できますか

はい、配送修理(郵送依頼)に対応しています。大阪・松屋町の店舗まで送付いただければ診断後にお見積もりをご連絡し、ご承諾後に作業へ進みます。返送までの目安は機種・症状により前後します。