埠頭で iPhone 13 が水浸しに、その日の出来事

先日のお昼前、当店の入口を勢いよく開けて入ってこられたのは、大阪市港区にお住まいの 26 歳の男性でした。海運会社で港湾業務を担当されているとのことで、作業着のまま、ジップ袋に入った iPhone 13 を握りしめておられました。お話を伺うと、その日の朝、埠頭で貨物の引き渡し作業をされている最中に、急な雨に降られたそうです。さらに作業中の波しぶきで、胸ポケットに入れていた端末が海水と雨水の両方を浴びてしまったとのこと。

iPhone 13 water-damage 修理事例

「画面は一瞬ついたけど、すぐ真っ暗になって、それから何しても反応せえへんのです」。お客様の声には、明らかに焦りがにじんでいました。仕事の連絡先も家族の写真もすべてその一台に入っているそうで、なんとかしてほしいというご依頼でした。

当店では水没のご相談を月に 8 件前後いただいており、特に夏前のこの時期は雨絡みの持ち込みが増える印象です。海水を浴びたケースは、真水よりも基板への影響が出やすく、時間勝負になる場面が多いと感じています。お客様にはまず「すぐに見てみます、少しお時間ください」とお伝えし、その場で状況の聞き取りに入りました。

分解前の聞き取りと初期診断、海水ならではの注意点

水没のご相談では、症状を診る前にいくつか必ず確認していることがあります。今回もまず、「水に触れてからどれくらい経ったか」「電源を入れ直したか」「充電器に挿したか」をお伺いしました。お客様は「電源は何回か押した」「充電は怖くて挿してない」とのこと。これは助かる対応で、通電による二次故障を避けられる可能性が高いケースです。

次に、お客様の同意のもと SIM トレイを開けると、トレイ奥の水没インジケーターは赤に変色していました。海水の場合、これが一気に進行することが多く、目安として 30 分以内の応急処置が結果を左右することもあります。続いて筐体表面を観察すると、スピーカー網の中に塩分らしき白い粉が確認できました。「これは海水ですね、真水よりも基板の腐食が進みやすいので、できるだけ早く中を開けて洗浄しましょう」とご説明しました。

分解前のお見積もりは無料で、お見積もり提示後のキャンセルも可能です。料金は機種・症状によって異なりますので、事前に概算をお伝えしたうえでご了承いただきました。お客様は「とにかくデータがあるか確認したい、それだけが知りたい」と。お気持ちはよく分かります。同じ症状の他事例でも、最初の関心は料金よりデータという方が多い印象です。

分解・洗浄・基板チェックの工程、当店の作業手順

店主の私自身が今回の作業を担当しました。2019 年の創業以来、水没対応は年間で数十件こなしてきましたが、海水のケースは毎回少し緊張します。理由は単純で、塩分が残っていると、その場では復旧したように見えても、数週間後にまたトラブルが起きることがあるからです。

まず端末の電源を完全に切り、特殊溶剤に浸して塩分と汚れを丁寧に落としていきます。バッテリーを外したうえで、超音波洗浄機にかけ、基板表面の腐食を可能な範囲で除去しました。今回はロジックボード上、特にチャージ IC とその周辺に塩分の堆積が見られたため、ここを重点的に洗浄。コネクタ周りも金属ブラシと綿棒で物理的に清掃します。

洗浄後、基板を乾燥させ、テスト用のバッテリーを接続して通電確認を行いました。最初は反応がありませんでしたが、もう一度コネクタを掃除して再接続したところ、Apple ロゴが表示。次にホーム画面まで進み、Wi-Fi・モバイル通信・Face ID・カメラの動作を一通り確認しました。Face ID はドットプロジェクターに塩分が残っていたようで、認識精度が落ちていましたが、こちらも分解清掃で改善。最終的に、スピーカーとマイクの音量バランスもお客様お預かり前と同等まで戻すことができました。

こうした工程の流れは、画面割れ修理とも一部共通する部分があります。詳しい流れは iPad画面割れ修理の流れ にもまとめていますので、参考になれば幸いです。

お引渡しと、海運業のお客様への注意点

作業時間はおおよそ 4 時間ほどでした。お預かりした日の夕方、お客様にお戻ししたとき、画面ロックを解除して連絡先と写真を確認された瞬間、目に見えて表情が緩まれたのを覚えています。「家族の写真、全部残っとった……」と一言。こちらまで嬉しくなる場面でした。

お引渡しの際には、海水を浴びた端末特有のリスクもお伝えしています。具体的には、当日復旧したように見えても、塩分の影響で数週間〜数ヶ月後に二次故障が出る可能性があることを正直にご説明しました。お客様にも、湿気の多い場所での使用や充電を避けるよう、いくつかの予防策をお伝えしています。修理後は技術基準適合確認のうえお引渡しいたしますので、その点もご安心いただける材料になればと考えています。

また、交換した部品に対しては 3 ヶ月の動作保証をお付けしています(落下・水濡れなど使用上のトラブルは対象外、詳細は保証規約ページをご確認ください)。海運や建設関係など、水場で端末を使われる方には、防水ケースや胸元以外の収納をおすすめしています。

港湾業務に限らず、雨・水分の絡む現場で iPhone を使われる方は、思った以上に多くいらっしゃいます。当店は 大阪・松屋町スマエキ として、こうした業務上の水没トラブルにも 2019 年から向き合ってきました。お困りの際は、来店でも配送でも構いません。営業時間は 10:00〜19:00、定休日は水曜です。修理ブログ一覧 ではこれまでの対応事例も紹介しています。お見積もりや所要時間の目安については、修理料金の目安 ページもあわせてご覧いただければと思います。

よくある質問

海水を浴びた iPhone 13 でも、データは残せますか?

ケースによります。今回のお客様のように通電を最小限に抑えていただけていた場合、洗浄後に起動して、データを保持したままお戻しできるケースが多い印象です。ただし基板の腐食が深く進んでいる場合は、データ保持が難しいこともあります。お預かり前にできる範囲で診断し、状況をお伝えします。

水没の修理にはどれくらい時間がかかりますか?

目安として、洗浄と乾燥、動作確認まで含めて半日〜1 日程度お預かりすることが多いです。基板の腐食状況により、追加で部品手配が必要な場合は数日延びることもあります。お預かり時に概算の所要時間をお伝えします。

水没後、自分で電源を入れて確認しても大丈夫でしょうか?

あまりおすすめしていません。水分が内部に残ったまま通電すると、基板がショートして二次故障につながることがあります。電源は切ったまま、できるだけ早めにお持ち込みいただく方が、復旧の可能性が上がる印象です。

海水と真水、修理の難しさは違いますか?

経験上、海水のほうが慎重さを要する場面が多いと感じます。塩分が基板に残ると、時間が経ってから腐食が進むことがあるためです。当店では海水案件の場合、超音波洗浄や溶剤洗浄を組み合わせ、塩分の除去を重点的に行っています。