サブ機として8年活躍した1台が、ある朝突然動かなくなった
先日、大阪市生野区からお越しになった30歳のお客様。IT系スタートアップでエンジニアをされている方で、業務用のメイン機とは別に、コード検証や古いアプリの動作確認用としてiPhone SE(第1世代)を現役で使い続けていたそうです。発売は2016年。なんと、当店に持ち込まれた時点で8年。ここまで長く使う方は当店でも珍しいケースで、月に数件あるかどうかという印象でした。
その日、いつものように出社前にメールを確認しようとロック解除した瞬間、画面が真っ黒に。数秒後に白いリンゴマークが浮かび、消え、また浮かぶ。いわゆるリンゴループです。「最初は再起動かと思ったんですが、10分経っても20分経っても、リンゴが出ては消えるだけで……」。お客様はそう振り返っていました。当日の昼休みに地下鉄で松屋町まで足を運んでくださり、お預かりすることになりました。
受付カウンターで端末を見せていただくと、たしかに電源を入れた瞬間からAppleロゴが点滅を繰り返し、ホーム画面まで一切到達しない状態です。物理的な落下痕はほぼなし。バッテリー膨張も確認できず、外観は8年使用とは思えないほどきれいでした。同じ症状の他事例もこの春に何度か対応していたため、嫌な予感はしていました。
診断で見えてきた NAND まわりのトラブル
まず行うのは目視と通電チェック。当店ではDFUモードに入れてMacのFinderから復元を試みる手順を最初に踏みます。お客様には事前に「データが残るかは診断後にしか分かりません。基板修理になるとバックアップ前提でお願いするケースもあります」とお伝えしました。
結果は、DFUモード認識まではいくものの、復元途中でエラー4013で停止。これはハードウェア起因、特にNAND(ストレージチップ)やCPU周辺のはんだクラックが疑われる典型的なエラーコードでした。経験上、iPhone SE(第1世代)は世代が古く、長期使用によるNAND経年劣化や、内部温度の繰り返しでBGA(チップ裏面のはんだボール)に微細クラックが入るケースが見られます。
顕微鏡で基板を確認したところ、NAND付近に光の反射の歪みがありました。これは目視レベルでは断定できないものの、リフロー(再加熱)では直らずNAND自体の交換または再ボーリング(はんだボール再形成)が必要なサインです。お客様にはここで一度経過をご報告。「中のデータは戻る可能性があるか」と尋ねられたので、「NAND自体が生きていればデータ移植で復旧の可能性はあります。ただしNAND チップそのものが死んでいた場合は、データは戻せません」と正直にお伝えしました。
分解前のお見積もりは無料、お見積もり提示後のキャンセルも可能です(分解診断・部品発注後は所定の手数料が発生する場合があります)。料金は機種・症状によって異なりますので、修理料金の目安のページもご参照ください。お客様は「8年連れ添った相棒なので、可能性があるならやってください」と決断。基板修理工程に進みました。
顕微鏡下で進める NAND 復旧の工程
iPhone SE(第1世代)の基板修理は、近年のiPhoneに比べると基板サイズに余裕があり、作業性は悪くありません。ただし、当時のはんだ材質と8年分の熱履歴を考慮し、加熱温度は通常より少し低めから慎重に上げていく必要がありました。
工程としては、(1) 画面・バッテリー取り外し (2) ロジックボードを筐体から摘出 (3) 防水テープ・ EMIシールド除去 (4) NAND周辺のはんだ状態を顕微鏡下で再確認 (5) BGAリボール (6) 再はんだ付け (7) 仮組み立てで起動テスト、という流れです。1工程ごとに導通チェックを挟むため、当日返却ではなく数日のお預かりとなりました。
今回はNAND を一度外し、はんだボールを再形成して再装着する手法を選択。NANDチップ自体は生きている可能性が高いと判断したためで、データ温存を最優先する考え方です。再装着後、起動テストの段階でAppleロゴが安定して点灯し、その後パスコード入力画面まで到達。お客様の写真フォルダ・LINE トーク履歴・業務用のSSHキーまですべて無事でした。エンジニアの方なので「キーが残ってたのは本当に助かる」と何度もおっしゃっていたのが印象的です。
動作確認は、Wi-Fi接続・通話・カメラ・指紋認証(Touch ID)・バイブ・スピーカー・充電(Lightning)・各物理ボタンと、ひと通り24時間以上のエージング後にもう一度。修理後は技術基準適合確認のうえお引渡しいたします。基板修理の他事例は修理ブログ一覧でも紹介しているので、似た症状でお悩みの方の参考になれば幸いです。
お引渡しと、長く使うための小さなアドバイス
お預かりから3日後、お客様に再来店いただきました。電源を入れて起動する SE(第1世代)を見て「本当に直るとは思わなかった」と笑顔。8年前の購入時からのアプリ環境がそのまま残っていることに驚かれていました。交換した部品に対しては3ヶ月の動作保証(落下・水濡れなど使用上のトラブルは対象外、詳細は保証規約ページ)です。
お引渡し時にお伝えしたのは三つだけ。第一に、リンゴループの初期兆候(発熱・突然の再起動・アプリ強制終了の頻発)を感じたら、早めにバックアップを取ること。第二に、純正もしくは認証済みのLightningケーブルを使うこと。第三に、夏場の車内放置を避けること。基板の熱履歴は確実に蓄積するので、長く使う端末ほど温度管理が効いてきます。
「iPad の画面割れも気になっているんですよね」とお客様。当店ではiPadも対応しているので、iPad画面割れ修理の流れもあわせてご紹介しました。来店修理だけでなく郵送依頼も承っているので、遠方の方でも対応可能です。
当店は2019年から松屋町で営業している大阪・松屋町スマエキです。営業は10:00〜19:00、水曜定休。iPhone SE(第1世代)のような古い機種であっても、直せる可能性があるかどうか、まずは一度お見せいただけたらと思います。お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。
よくある質問
iPhone SE(第1世代)はもう古い機種ですが、修理してもらえますか?
はい、当店では iPhone SE(第1世代)を含む旧機種にも対応しています。ただし純正部品や互換部品の在庫状況によりお預かり期間が前後する場合があります。事前にお問い合わせフォームよりご相談いただければ、対応可否をお伝えいたします。
リンゴループになった iPhone のデータは戻ってきますか?
症状の原因によって異なります。NAND チップ自体が生きていれば、基板修理によりデータを保持したまま復旧できるケースもあります(基板修理・水没等の重度故障は事前バックアップ推奨)。NAND が物理的に故障している場合はデータ復旧が困難なため、診断時に正直にお伝えしています。
基板修理は当日に返してもらえますか?
基板修理は導通チェック・エージング(動作確認)を含むため、機種・症状によっては数日お預かりとなります。当日返却可能なケースもありますが、データ保持を優先する場合は無理に急がず、慎重に進めることをおすすめしています。
修理の見積もりだけでも対応してもらえますか?
もちろんです。分解前のお見積もりは無料、お見積もり提示後のキャンセルも可能です(分解診断・部品発注後は所定の手数料が発生する場合があります)。来店またはお問い合わせフォームよりご連絡ください。
店舗はどこにありますか?
大阪市中央区松屋町住吉6-26、松屋町筋沿いにございます。営業時間は10:00〜19:00、水曜定休です。地下鉄松屋町駅から徒歩圏内で、来店修理のほか郵送修理にも対応しています。