先日、ネットの自己流動画を真似て強力ネオジム磁石で画面を浮かせようとしたiPhone 7が、当店スマエキ(大阪・松屋町)に持ち込まれました。表面のヒビ自体は当初軽微だったのですが、磁石を使ったあとに「Apple Payが全く反応しなくなった」とお客様。月に2-3件、いわゆるDIY後の二次故障で持ち込まれるケースがありますが、磁化系トラブルは件数こそ少ないものの一度起きると厄介です。今回はその経緯と、当店での復旧手順、そして再発防止のための教訓をまとめておきます。

iPhone 7 screen-crack 修理事例

磁石で画面を吸い寄せて剥がそうとした経緯

お持ち込みされたお客様によると、海外の動画投稿サイトで「強力磁石でiPhoneの画面と本体のすき間を広げ、ヘラ代わりに使う」という手法を見つけたとのこと。実際にはホームセンターで購入したネオジム磁石(直径20mm前後の円柱型)2個を画面の左右に貼り付け、振動を加えながら持ち上げようとした、という流れでした。

iPhone 7は2016年発売のモデルで、画面の固定は両面テープと爪、そして下部の数本のネジで成り立っています。本来は画面下端からピックを差し込み、ホームボタンの指紋認証ケーブルを切らないように慎重に開ける構造です。磁力で持ち上げる手法には、強力磁石が画面のフレームを引っ張る前に内部の磁気センサーやNFC関連部品の方に強い磁場を掛けてしまう、という構造的な落とし穴がありました。

注意:スマートフォンの内部には、コンパス用の地磁気センサー、NFCアンテナとコントローラ、さらにスピーカー用の小型磁石ユニットなど、磁場の影響を受けやすい部品が密集しています。ネオジム磁石のような強力な永久磁石を本体表面に長時間張り付ける行為は、これら部品の磁化や誤動作を引き起こす可能性があるため、修理目的であっても推奨されません。

当店でお預かりした時点では、画面の割れは確かに広がってはいましたが、それ以上に「Suicaをかざしても画面に何の反応も出ない」「ウォレットアプリでカード追加時にエラーになる」という症状が目立っていました。画面割れ単体での持ち込みはよくありますが、Apple Pay不調を伴うのは経験上かなり珍しいケースとなります。

同じ機種・同じ症状の他事例は 同じ症状の他事例 でもまとめておりますので、ご参考までに。

分解診断で見えた被害状況とNFC不調の正体

当店で分解した際、まず確認したのは画面側の損傷でした。液晶パネル自体は割れと一部表示ムラがあり、これは交換確定。タッチ機能も右上の一部で反応が鈍くなっていました。問題はその先、本体側の上部にあるNFCアンテナとコントローラ周辺の挙動でした。

iPhone 7のNFCモジュールは本体上部、リアカメラ近くにアンテナコイルが配置されています。テスターで導通を確認したところアンテナそのものは断線しておらず、コイル抵抗値も正常範囲内。にもかかわらず、組み戻して動作テストするとSuica・iD・QUICPayすべて反応しません。

当店の経験上、このパターンで疑うべきは次の3つでした。

  • NFCコントローラIC自体の磁化または内部破損
  • 地磁気センサー(コンパスIC)の磁化による近接判定の誤動作
  • ロジックボードへの強磁場曝露によるソフトウェア側のフラグ異常

診断の結果、iOSの設定アプリからコンパスを起動すると北の方角がぐるぐる回り続け、補正画面で8の字を描いても収束しない状態でした。これはコンパスIC側の磁化を強く示す現象です。さらにNFC側も、近距離で他のNFCタグをかざしても全く検出しないことから、コントローラIC周辺にも影響が及んでいると判断しました。

つまり、ネオジム磁石を画面表面に貼り付けたことによる磁場が、画面の真下にあるロジックボード上部一帯の磁気センサーとNFC関連部品を一緒に「磁化」させてしまった、というのが今回の正体でした。

当店での修理工程と復旧までの流れ

方針としては「画面交換+NFCコントローラ周辺の脱磁処理+再診断」の3段構えで進めました。お預かり時間は基板処理を含めて、当日中の返却が難しい場合もあるためお客様には2日程度の見込みでご案内しています(混雑状況により前後します)。

まず画面交換から。iPhone 7はホームボタン下のペンタローブネジ2本を外し、吸盤と薄いピックで画面を持ち上げる手順です。今回は磁石を使った無理な開閉のあとが残っており、本体側の防水テープが部分的に剥がれていました。新しい純正同等液晶パネルとフレームに張り直したうえで、防水テープも貼り替え。指紋認証ケーブルは元のホームボタンへ移植し、Touch IDは保持できました。

次にNFC側です。一般的に、磁化したICそのものは内部の素子レベルで磁気記録が発生するわけではないものの、周辺の小型インダクタや磁気センサーが帯磁すると、コイルやICが誤動作したまま固定化される場合があります。当店では消磁器(ジュエリーや時計修理で使う交流式デガウサー)を使い、ロジックボード上部に近接させて穏やかな交流磁場でゆっくり減衰させる工程を取りました。基板への熱を発生させない方式のため、他の部品への二次被害は抑えられます。

消磁後にコンパスを再起動したところ、北方向で安定して止まるようになりました。Apple Payにテスト用のSuicaを再登録してみると、無事「カード追加」が完了。実機を改札ゲートを模した試験用リーダーにかざしても、ピッと音が鳴って反応するところまで戻りました。

修理後は技術基準適合確認のうえお引渡ししています。交換した液晶パネルに対して3ヶ月の動作保証(落下・水濡れなど使用上のトラブルは対象外、詳細は保証規約ページ)。NFCコントローラについては脱磁という性質上、再帯磁の可能性をゼロとは言い切れないため、別途保証規約をご説明したうえで返却となりました。料金は機種・症状によって異なります。お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。詳しくは 修理料金の目安 をご確認ください。

なお、iPad側でも同じ画面割れトラブルが起きるケースがあります。手順を知りたい方は iPad画面割れ修理の流れ もあわせてどうぞ。

今後への教訓:磁石は画面はがしの道具ではない

今回の事例から、お客様にお伝えしたいことは3点です。

第一に、ご自身での修理にチャレンジすること自体は否定しません。ただし、ネット上で見かける「強力磁石で画面を吸い寄せる」「電子レンジで温めて接着剤を溶かす」「冷蔵庫で凍らせて剥がす」といった手法は、本来の修理工程から見ると合理性が薄く、内部部品へのダメージリスクが大きい行為でした。特に磁石は、画面のすき間を物理的に開ける役には立たない一方で、内部センサーへの影響は確実に発生します。

第二に、Apple Payをはじめとする近距離通信機能は、修理現場では「壊れているかどうかの判定が難しい」部類の故障です。アンテナの抵抗値だけ見ると正常、しかし実機テストでは反応しない、というギャップが起きやすく、当店でも実際にカードをかざして確認するまで判断を保留しています。月に1回前後はNFC・FeliCa関連のご相談がありますが、画面割れ修理と同時にNFC不調が出た場合は、磁化の可能性を最初に疑うようになりました。

第三に、画面が割れた段階で早めにご相談いただくのが結局のところ近道でした。割れたまま使い続けると指のケガやガラス片の落下、防水機能の低下といった二次被害も増えていきます。当店スマエキは2019年に大阪・松屋町(〒540-0017 大阪市中央区松屋町住吉6-26)で開業して以来、来店修理に加えて配送修理(郵送依頼)にも対応してまいりました。営業時間は10:00〜19:00、水曜日が定休となっております。

同じiPhone 7やiPhone 8系の画面割れ事例、他機種の修理記録は 修理ブログ一覧 にまとめています。お住まいの地域から来店検討中の方は 大阪・松屋町スマエキ のご案内をご覧ください。お見積もりは分解前であれば無料、提示後のキャンセルも可能です(分解診断・部品発注後は所定の手数料が発生する場合があります)。

ネットの裏ワザを試す前に、まずは一度ご相談いただければと思います。お気軽にお問い合わせフォームからどうぞ。

よくある質問

iPhone 7の画面に磁石を当てるとApple Payが本当に使えなくなりますか?

強力なネオジム磁石を画面表面に密着させた場合、内部のNFCコントローラ周辺や地磁気センサーが磁化し、Apple PayやSuicaが反応しなくなる事例があります。当店でも実例の持ち込みがありました。

磁化してしまったNFCは元に戻りますか?

多くのケースでは消磁器による脱磁処理と動作確認で復旧していますが、内部ICそのものに損傷がある場合は基板側の修理が必要となります。診断時に判断いたします。

画面割れの修理に何日くらいかかりますか?

iPhone 7の画面交換単体であれば当日返却となるケースもあります。NFCや基板側の処理を伴う場合は数日お預かりすることがあり、混雑状況により前後しますので事前にご案内します。

DIYで失敗したiPhoneでも修理してもらえますか?

対応可能です。当店ではご自身で分解された端末や、別の修理工程を経た端末も含めてお預かりしております。事前にどのような作業をされたかお聞かせいただけると診断がスムーズです。

営業時間と定休日を教えてください。

大阪市中央区松屋町住吉6-26のスマエキは、10:00〜19:00で営業しております。定休日は毎週水曜日です。来店修理と配送修理(郵送依頼)の両方に対応しています。