iPhone 11 water-damage 修理事例

釣り場での悲劇、海水入り漁箱に水没

先日、大阪市港区にお住まいの 30 代男性のお客様が、慌てた様子で当店にご来店されました。聞けば釣具店にお勤めで、休日は朝から釣りに出かけるのが何よりの楽しみだそうです。その日も和歌山方面の磯場で釣りを楽しんでいたところ、足元の岩に手元が当たり、ポケットから滑り出した iPhone 11 が運悪く海水の入った漁箱の中へ。

「ほんまに数秒のことやったんです。すぐに拾い上げたんですけど、もう画面が真っ暗で…」とお客様。漁箱の中身は、釣った魚を活かしておくための海水と氷でした。淡水の水没とは違い、海水は塩分・ミネラル・有機物を含んでいるため、内部回路への侵食が一気に進みます。お預かり時の状態は、電源ボタンを押しても無反応、本体下部のライトニングコネクタ周辺には白い結晶のようなものが付着し始めていました。

当店では水没修理のご依頼を月に 5-7 件ほどお受けしていますが、海水水没はそのうち 2 割程度。同じ症状の他事例でも申し上げている通り、海水のケースは時間との勝負になります。ご来店までの時間も気になりましたが、お客様は釣り場で水没後すぐに電源を入れず、タオルで拭いてビニール袋に密閉、そのまま電車を乗り継いで松屋町まで来てくださいました。この初動が後の復旧率を大きく左右します。

分解診断、内部の塩分付着を確認

まずは分解前にお見積もりのご説明をしてから、本体を開けて内部を診ていきます。背面ディスプレイを外した瞬間、独特の磯の香りがふわっと立ち上がりました。経験上、これは海水水没の典型的なサインでして、内部に塩分が広く回っている可能性が高い状態です。

診断の結果、確認できた状況は次の通りでした。

  • バッテリー周辺のシール部に海水の侵入跡(白濁した結晶)
  • ロジックボード下部の水没インジケーターが赤色反応
  • 充電 IC 周辺の端子に塩化物の付着
  • 液晶コネクタ部に微量の水滴痕

幸いにも、ロジックボード中央部の主要 IC エリアまでは塩分の侵食が進んでおらず、表面実装部品の物理的な脱落も見当たりませんでした。お客様にはこの時点で診断結果をお伝えし、「基板洗浄で電源復旧を試みる方針で進めますが、海水のため通常の水没より復旧率が下がる可能性があります」と正直にご説明。お客様からは「ダメ元でもお願いします、写真だけは戻ってきてほしいんです」とのご返答でした。お子さんとの釣行写真がたくさん入っているとのことで、データ復旧へのプレッシャーを感じる一瞬。

超音波洗浄と乾燥、そして電源投入

修理工程に入ります。まずロジックボードを完全に取り外し、シールド類を外して基板裏側まで露出させました。海水水没の場合、見えている表面だけでなくシールド下に塩分が潜伏していることが多いためです。

専用の洗浄液(イソプロピルアルコール 99.7%)で予備洗浄を行ったのち、超音波洗浄器に投入。周波数 40kHz、温度 30℃ 前後、約 8 分かけて細部の塩分を浮かせていきます。一度では完全に除去できないため、洗浄液を交換してさらに 5 分追加洗浄。基板表面に付着していた白い結晶は、二回目の洗浄でほぼ姿を消しました。

続いて乾燥工程です。低温の温風乾燥庫で約 40 分、その後デシケーターに移してさらに 30 分置きます。急激な加熱は基板の反りや部品の劣化を招くため、当店では時間をかけてゆっくり水分を飛ばす方針でやっています。

乾燥後の目視確認とテスターでの導通チェックを終え、いよいよ電源投入。安定化電源で電流値をモニタリングしながら徐々に電圧を上げていくと、待機電流が正常範囲内に収まり、ディスプレイに見覚えのあるリンゴマーク。お客様の名前で起動した iOS のロック画面が表示された瞬間は、私たちもほっと胸を撫で下ろしました。

復旧後の動作確認とお引渡し

電源が入っただけで安心するのはまだ早く、ここからが本番です。各部の動作確認を一つずつ進めていきます。

  • Face ID — 正常認識
  • カメラ(広角・超広角) — 撮影可、画質劣化なし
  • スピーカー・マイク — 通話テストで音声クリア
  • Wi-Fi・Bluetooth — 接続安定
  • 充電(有線・MagSafe) — 両方とも正常
  • 各種ボタン・サイドキー — 反応良好

幸い全機能が問題なく動作し、何より大切な釣行写真もすべて無事でした。お客様には「お子さんとのデータが残ってよかったです」とお声がけしたところ、満面の笑みで「ほんまに助かりました」とお返事いただきました。修理後は技術基準適合確認のうえ、お引渡し時にお客様自身でも一通りの動作確認をしていただきます。

水没修理後は内部のパッキンが劣化している場合が多く、防水性能は新品時の状態には戻りません。今後の防水対策として、釣り場では防水ケースの併用をおすすめしました。また、3 ヶ月の動作保証の対象範囲(交換した部品が対象、再度の落下・水濡れは対象外)についてもご説明し、保証規約ページの URL をお渡ししました。

当店は 大阪・松屋町スマエキとして 2019 年から営業しており、iPhone・iPad・Android 各種スマートフォンの修理を専門に対応しています。営業時間は 10:00〜19:00、水曜定休。来店修理のほか、遠方の方には配送修理(郵送依頼)も承っておりますので、釣り場や旅行先での水没トラブルでもご相談ください。料金は機種・症状によって異なるため、修理料金の目安をご覧いただくか、お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。同じ Apple 製品の修理事例として iPad画面割れ修理の流れもご参考にしていただけます。過去の修理ブログは 修理ブログ一覧からどうぞ。

よくある質問

海水で水没した iPhone は復旧できますか?

ケースバイケースとなります。当店実績では、水没後すぐに電源を入れず乾燥状態でお持ち込みいただいた場合、基板洗浄で電源復旧する確率が比較的高めです。ただし海水は淡水よりも腐食が早いため、ご来店までの時間と内部の侵食状況によって結果が変わります。まずは分解前のお見積もり(無料)で診断させていただきます。

水没した直後はどう対処すればいいですか?

電源を入れず、すぐにタオル等で水分を拭き取り、できるだけ早くお持ち込みください。電源を入れたり充電を試みると、内部でショートが起こり故障範囲が広がる可能性があります。お米の中に入れる方法は内部に米粒が侵入することがあるため、当店ではおすすめしていません。

水没修理後、防水性能は元に戻りますか?

残念ながら、水没後に分解した端末は出荷時と同じ防水性能には戻りません。内部のパッキンや接着部が劣化しているためです。再度の水濡れを防ぐため、防水ケースの併用をおすすめしています。

データはそのまま残りますか?

ほとんどの水没修理ではデータを保持したまま対応可能ですが、基板の損傷度合いによってはデータ復旧が困難なケースもあります。重度の水没修理の場合、事前のバックアップを推奨しています。

配送(郵送)での水没修理は受け付けていますか?

はい、配送修理も承っております。お問い合わせフォームよりご連絡いただければ、発送方法と注意点をご案内します。郵送中の追加被害を防ぐため、しっかり乾燥させてから梱包することが重要です。