「iPhoneが水に落ちた、慌ててドライヤーをかけてしまった」「お米の中に一晩入れたけど画面が映らない」——こうしたご相談は、当店でも月に8〜10件ほど寄せられます。実は、水没直後の30分間に何をするかで、修理難度も復旧率も大きく変わってきます。

当店スマエキは2019年から大阪・松屋町で基板修理に取り組んでおり、水没救済も多く扱ってまいりました。よくいただく疑問を、店主の視点で1つずつお答えしていきます。同じ症状の他事例もあわせてご覧いただくと、状況の把握に役立つかと思います。
水没後すぐにすべき3つの行動とは?
まず最優先は「触らない・押さない・充電しない」の3点です。これだけで、その後の修理難度が劇的に下がります。
具体的には、(1)即座に電源を落とす、(2)SIMトレイを抜いて内部の通気を確保する、(3)柔らかい布で外側の水分だけ拭き取り、本体を縦置きでLightning/USB-Cコネクタを下向きにして自然乾燥、という流れになります。経験上、ここまで落ち着いて対処できた方は、データ復旧率が大きく上がる印象があります。
逆に、ホームボタンや電源ボタンを連打したり、画面が映るかどうか確かめようとロック解除を試みたりすると、通電中の基板に水が回り、ショートの引き金になります。「動くか確認したくなる気持ち」をいかに抑えるかが、最初の関門でした。
電源はONとOFFどちらにすべき?
結論から申し上げると、すでにONなら直ちにOFF、OFFのままなら絶対に入れない、これが鉄則となります。
なぜかと言いますと、水分は電気を通す経路となり、通電中の基板上を流れた水が回路を短絡させます。一度ショートで焼き切れたICチップは、乾燥させても元には戻りません。当店の実績では、水没直後にOFFのまま持ち込まれたiPhone 13 Pro/14/SE第3世代は、基板洗浄のみでデータごと復旧できたケースが多いです。
一方、「電源ボタンを押して動作確認した後で持ち込まれた個体」は、電源管理ICまで損傷していることが少なくありませんでした。「とりあえず動くか見てみよう」が、結果として最大のダメージを与えてしまうのです。
ドライヤーで乾かしていい?
ドライヤーは、温風・冷風どちらもおすすめできません。やってしまった方は多いのですが、失敗パターンの代表格となります。
温風は、内部の水分を蒸発させる前に、まず本体の樹脂部品やバッテリーを過熱させます。バッテリーが膨張して画面を押し上げる事例を、当店でも何度か見てきました。冷風でも、外側のスピーカーやマイクの穴から水を内部の奥へ押し込んでしまい、乾きにくいエリアに水を滞留させる結果になります。
正しいのは、室温(20〜25度目安)で縦置きにして、24時間以上待つこと。急がば回れの典型でした。乾燥剤(シリカゲル)を周囲に置く方法は、お米よりは現実的です。
お米の中に入れる対処法は本当に効くの?
結論として、お米はおすすめしません。SNSでもよく拡散される方法ですが、デメリットの方が大きいのが実情です。
お米の吸湿能力はシリカゲルの数十分の一しかなく、表面の水滴を吸う程度の効果しか期待できません。それに加えて、米粉や細かい澱粉がスピーカー網・Lightning/USB-Cコネクタ・SIMトレイに入り込み、後々の故障の原因になります。先日、「お米から取り出したらコネクタが粉だらけで充電できない」というiPhone 12をお預かりしたばかりです。
もし吸湿剤を使うなら、市販の食品用シリカゲル(海苔の袋などに入っている粒)を多めにジップロックへ入れ、本体と一緒に密閉する方が、まだ理にかなっています。
振って水を出すのはNG?
はい、強く振るのは避けてください。気持ちは分かりますが、これも内部に水を散らす行為になります。
iPhoneの内部は、ロジックボード・カメラ・スピーカー・Taptic Engineといった精密パーツが密集しており、振動で水滴が思わぬ方向へ移動します。とくに、ボリュームボタン側からカメラユニットへ水が回ると、レンズ内に結露が残り続け、後から白い曇りが取れなくなることがありました。
軽くトントンと縦向きでコネクタ側を下に叩き、自然に出てくる水を切るくらいに留めるのが、現実的な対応です。
ガラス越しに見える内部結露、どう判断すればいい?
カメラレンズの内側、画面の下、リアロゴの周辺に白く曇った水滴が見えたら、内部に水が入った確実なサインとなります。
外側を完全に拭いた後でも、ガラス越しに白い曇り・点状の水滴・茶色いシミが見える場合、内部のフレキシブルケーブルや基板にも水が達していると考えてよいでしょう。とくに、茶色いシミは「水が乾いた跡=腐食(さび)が始まっている」サインで、放置すると数日〜数週間でICピンが断線します。
こうしたサインを見つけたら、自然乾燥で復活したように見えても、内部洗浄をご検討いただきたいタイミングです。「動いているから大丈夫」と数週間経ってから持ち込まれると、基板の腐食が進行していて作業時間が倍以上かかることもありました。大阪・松屋町スマエキでは、分解前のお見積もりは無料、お見積もり提示後のキャンセルも可能です(分解診断・部品発注後は所定の手数料が発生する場合があります)。
海水・コーヒー・温泉、水質によって何が違う?
水質によって緊急度が大きく変わります。当店で扱った範囲では、以下のような印象でした。
真水(水道水・雨水)が最も緩やかで、24〜48時間以内のご相談なら基板洗浄だけで復旧する事例も少なくありません。コーヒー・ジュース・お茶は糖分や酸が含まれており、乾くと粘着質の被膜が基板に残り、洗浄に手間がかかります。先日お預かりしたiPad miniは、カフェラテをこぼされた状態でしたが、超音波洗浄で対応できました。iPad画面割れ修理の流れと同様、状態確認と分解診断から進めてまいります。
最も厳しいのが、海水と温泉です。塩分やミネラルが基板上で電気分解を起こし、乾いた瞬間から金属配線を侵食し始めます。海辺で水没させた場合、できれば真水で軽くすすいだ後、すぐ電源を落としてご来店いただくのが、ダメージを最小限に抑える流れとなります。修理料金の目安は機種・損傷範囲によって異なりますので、お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。
水没修理のご相談、お気軽にどうぞ
水没は、最初の判断で結果が大きく変わる症状です。「動いているけど不安」「数日経ってから挙動がおかしい」というケースも、お気軽にご相談ください。
スマエキは大阪市中央区松屋町住吉6-26、地下鉄松屋町駅から徒歩1分、10:00〜19:00(水曜定休)で来店修理・配送修理どちらにも対応しております。交換した部品に対して3ヶ月の動作保証(落下・水濡れなど使用上のトラブルは対象外、詳細は保証規約ページ)もお付けいたします。修理事例は修理ブログ一覧にてご確認いただけます。お問い合わせフォームよりご連絡をお待ちしております。
よくある質問
水没してから何日後でも修理は受け付けてもらえますか?
経過日数に関係なくご相談を承りますが、時間が経つほど基板の腐食が進み、作業時間が長くなる傾向にあります。当店の実績では、48時間以内のご来店が復旧率の目安として高くなります。
水没後に動いているiPhoneも修理に出すべきですか?
はい、内部洗浄をおすすめいたします。表面上は動作していても内部に水が残っていると、数週間後にバッテリー膨張・カメラ結露・突然の起動不能などの症状が出るケースがあります。
水没後、データは取り出せますか?
電源OFFの状態で持ち込まれたケースは、基板洗浄でデータごと復旧できる事例が多いです。ただし、ショートで焼損が広範囲に及んでいる場合はデータ救出が困難になりますので、事前バックアップが推奨となります。
iPhoneは耐水仕様だから大丈夫ではないですか?
IP68等級は新品時の試験条件下での性能で、経年劣化やケース変形でパッキンの密閉性は低下します。当店でお預かりするiPhone 12以降の水没機も、実際は内部まで浸水している事例が大半でした。
配送での水没修理は対応していますか?
はい、全国から郵送で修理依頼を承っております。発送前にあらかじめ完全に電源を切り、コネクタ部の水分を布で拭き取ってから、緩衝材に包んでお送りいただく流れとなります。