iPhone XS は 2018 年発売モデルで、当店でも基板修理のご依頼が多い機種となります。A12 Bionic 搭載で性能は十分なものの、年数の経過とともに基板側のトラブルが目立つようになってきました。先日も松屋町のお客様から「突然画面が真っ暗になった」とのご相談をいただいたばかりです。本記事では、よくいただく疑問に Q&A 形式でお答えしてまいります。

リンゴループは基板故障と画面故障、どちらが原因ですか?
リンゴループとは、Apple ロゴが表示されては消える、を繰り返す症状を指します。原因は大きく分けて 3 つでして、ソフトウェア起因(iOS アップデート失敗など)、ストレージ NAND の劣化、電源管理 IC のトラブル、というところが代表的でしょうか。
判別の目安として、PC に接続して iTunes(現在は Finder)で認識されるか、リカバリーモードに入れるか、で切り分けが進みます。リカバリーモードで復元エラー 4013 や 9 が出る場合は、NAND または基板側の可能性が高い印象です。同じ症状の他事例もご参考になさってください。
充電はできるのに起動しない、これは何が起きていますか?
充電マークは出るのに電源が入らない、というご相談、月に 3-4 件は受けます。この場合に多いのが PMIC(電源管理 IC)周辺のトラブル、もしくは CPU 周辺の半田クラックです。
当店ではまず電流測定から入りまして、待機電流の挙動を見て短絡(ショート)箇所を絞り込んでまいります。経験上、落下歴のある端末は CPU の BGA ボール側にクラックが入っていることが多く、リフロー(再加熱)で復活するケースもあれば、リワーク(取り外して再装着)が必要なケースもございました。
iTunes(Finder)で認識されない場合、データは諦めるしかないでしょうか?
必ずしもそうとは限りません。USB 認識しない原因として、Lightning コネクタの汚れ・破損、Tristar IC(USB 制御 IC)の故障、CPU 周辺の問題、と段階があります。
多くのケースで Tristar IC の交換により認識が復活しますが、CPU 周辺まで損傷が及んでいる場合はデータ救出専用の手法(NAND 直読み)を検討することとなります。詳しい流れはiPad画面割れ修理の流れと基本的には同じ手順を踏みますので、参考までにご覧いただければと思います。
突然画面が真っ暗になり何の反応も無くなりました、これは文鎮化ですか?
俗に言う「文鎮化」とは、電源も入らず充電反応も無く、PC にも認識されない状態のことです。iPhone XS で 2024 年以降増えているのが、経年による半田疲労が原因の文鎮化でした。
当店の実績では、文鎮化の約 6 割が CPU の BGA リフローで起動可能となっております。ただし完全に CPU が損傷している場合は、データ救出のみのご提案となるケースもございますので、その点は事前にご了承いただいております。
水没後しばらく動いていたのに不調になりました、原因は何でしょうか?
水没のやっかいなところは、直後に動いていても数日〜数ヶ月後に腐食が進んでトラブルが表面化することなのです。海水・ジュース・温泉など、真水以外の水没は特に腐食の進行が早い傾向にあります。
当店では水没歴のある端末は超音波洗浄機で基板をクリーニング後、顕微鏡で腐食箇所を確認し、必要に応じて部品交換を行います。先日も「3 ヶ月前に水没したけど普通に使えていた」という iPhone XS が、突然 Wi-Fi が繋がらなくなったとのことで、Wi-Fi/Bluetooth IC 周辺の腐食を確認、IC 交換で復旧した事例もございました。修理料金の目安については機種・症状により異なりますのでお問い合わせください。
BGA リワークが必要かどうかは、どう判断しますか?
BGA リワークとは、基板裏面の半田ボール付き IC(CPU、PMIC、NAND など)を専用の機材で取り外して再装着する高難度の作業です。当店でリワーク対象となる症状の目安は、リフロー(加熱のみ)で改善しない、IC 自体の交換が必要、半田ボールの完全な打ち直しが必要、といったケースとなります。
iPhone XS の CPU 周辺は基板が薄く、リワーク時の熱管理が非常にデリケートでした。当店では赤外線加熱とプリヒーターを併用し、温度プロファイルを管理しながら作業を進めております。技術詳細は修理ブログ一覧にも記事を掲載しておりますので、ご興味ある方はご覧ください。
基板修理・データ救出・買換え、どう選べば良いでしょうか?
判断基準として当店からお伝えしているのが、データの重要度、思い出の写真や仕事のデータが必要か、修理後の利用期間、あと何年使う想定か、保証・サポートの有無、という 3 点です。
iPhone XS は発売から 6 年以上経過しているため、Apple の正規サポート対象外(Vintage 製品扱い)となっております。基板修理は技術的には対応可能ですが、修理後の長期利用を前提とする場合は新機種への買換えも視野に入れた方が現実的なケースもございます。データだけ取り出したい、というご要望でしたらデータ救出に特化したご提案も可能です。大阪・松屋町スマエキでは 2019 年から基板修理を専門に対応しておりますので、判断に迷われた際はお気軽にご相談ください。
iPhone XS の基板トラブルは、症状から原因をある程度絞り込むことができます。ただし正確な診断には専用機材での測定が必要となりますので、自己判断での分解はおすすめいたしません。当店では分解前のお見積もりは無料、提示後のキャンセルも可能(分解診断・部品発注後は所定の手数料が発生する場合があります)ですので、まずはお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。来店修理のほか、遠方の方には配送修理も対応しております。営業時間は 10:00〜19:00、水曜定休となります。
よくある質問
iPhone XS の基板修理にかかる日数はどれくらいですか?
症状により異なりますが、リフローのみで改善するケースは当日〜翌日、IC 交換やリワークが必要な場合は 3-7 日程度をご案内しております。混雑状況や部品在庫により前後しますので、お預かり時にお見積もりとあわせてご案内いたします。
リンゴループの状態でデータは残りますか?
原因が NAND 以外の場合、多くのケースでデータを保持したまま修理可能です。ただし基板修理・水没等の重度故障では事前バックアップを推奨しております。NAND 故障の場合はデータ救出が困難なケースもございます。
他店で修理を断られましたが対応できますか?
当店では BGA リワークまで対応可能な機材を揃えておりますので、診断のうえご対応できる場合がございます。まずは現状をお問い合わせフォームよりご相談ください。診断の結果、対応困難と判断した場合はその旨お伝えいたします。
保証はありますか?
交換した部品に対して 3 ヶ月の動作保証をお付けしております(落下・水濡れなど使用上のトラブルは対象外、詳細は保証規約ページをご確認ください)。基板修理の場合は症状ごとに保証範囲が異なるため、お見積もり時に個別にご案内しております。